151427827_1e49c04134_z新宿三大大型書店

私はかつて新宿の大学に通っていましたので、新宿にある主要な書店には時間のある時よく立ち寄りました(否、ない時も現実逃避のために通っていた気がしますが…)。新宿には3つの大型書店がありました。すなわち「紀伊国屋書店(新宿本店並びに新宿南店)」「ジュンク堂書店」「ブックファースト(新宿店並びにルミネ新宿店」の3つです。(ただし、ジュンク堂書店はすでに新宿から撤退しておりますし、ブックファースト新宿店は最近できたばかりなので、これらの書店が全て同時に営業していたわけではありません)いずれも大型書店かつチェーン店という部分は共通していますが、それぞれ性格が異なるので、目当ての本や気分によって使い分けておりました。あらゆるジャンルの本を揃えているように見える大型書店でも、チェーンごとの特徴、カラーというものは見えてくるようにおもいます。まったく個人的な印象でしかありませんが、新宿にある(あった)これら3つのチェーンには、次のような特徴があると感じています。

■紀伊国屋書店

新宿の書店の中でも特に有名なお店ではないかと思います。新宿本店、新宿南店共に、アクセスしやすい低階層に文芸書や文庫本を集めており、文学・文芸分野が中心となっているように感じます。ただし、新宿本店に関しては、コミック関係書籍のみ独立して別館になっています。単にスペースの問題なのか、営業上の戦略なのかはわかりませんが。

まったくの余談ですが、新宿本店はエレベーターガール・ボーイを日中毎日常駐させている、今となっては貴重なお店です。びしっと背筋を伸ばし、丁寧に応対してくれる姿を見ると、こちらも気分良くなります。

■ジュンク堂書店

紀伊国屋書店新宿本店のはす向かい、現在ビックロ(ビッグカメラ+ユニクロ)があるビル(旧三越アルコット)の中にテナントとして入っていました。現在新宿からは撤退しているため、池袋にある本店に幾必要があります。ジュンク堂書店は店内のあちこちにイスを置き、立ち読みせずとも座り読みしながら本を選べる上、店内にカフェを設置してお茶を飲みながら本を選べるお店づくりを早くから行っているのが特徴です。ジャンルとしては自然科学・工業分野が強く、学生時代は良く入り浸っていました。

■ブックファースト

ブックファーストは、大学に在学している間はルミネ新宿店しかありませんでした。大学院在籍中にモード学園コクーンタワーが完成すると同時にそのテナントとして新宿店が開店しました。ルミネ新宿店、新宿店共に営業時間が長く遅くまでやっていることが特徴で、帰りの遅かった私にはありがたかったです。ジャンルとしては芸術・デザイン分野や生活実用書に力が入っているように思います。ただし新宿店に関しては、同じビルの中にモード学園系列の首都医校(医療系専門学校)やHAL東京(工業系専門学校)が入っていることから、医療・工学系の書籍も充実しています。

おわりに

新宿にある(あった)三大大型書店を例に、チェーン店ごとに特徴があるというお話をしました。ただし同じチェーン店であっても、違う要因が作用して異なる特徴が現れることもあります。それについてはまた別項で。



Soroban / teclasorg

(余談):この記事にどうしてそろばんの写真が入るのか、わかってもらえる人はどれだけいるのでしょうか…

音楽の科学---音楽の何に魅せられるのか?

我が家の近所に西友があり、その中にテナントとしてLIBROが入っています。規模としては典型的な中型書店で、面積はそれほど広くないのですが、ここは店舗規模の割に、妙に音楽の棚が充実しています。音楽の好きな店員さんがいるのか、武蔵野音大が沿線にあるからか、理由は定かではありませんが。

この本はそこで偶然見つけたものです。ハードカバーでページ数はなんと649ページ。一見すると国語辞典に見えそうな、ヴォリュームのある本です。(Amazonの書影だと厚みが伝わらないのが残念。)分厚くて、文字が多くて、手を出すのにちょっと勇気が必要でしたが、音楽情報学研究をかじった端くれとしては必見だろうと思い、思い切って購入しました。

主に聴覚心理や脳機能科学の観点から見た、音楽の最新研究成果が多数紹介されています。あくまでもサイエンスライターによる科学読み物として書かれているので、内容がきれいに整理されておらず、話のまとまりがあいまいだったり、わかりやすく書こうとして却って説明が不明確だったり(これは訳の問題もあるかもしれません)しますが、興味深い内容が多く含まれていました。楽典、特に和声について、少し踏み込んで学びたい人にも参考になる本かもしれません。

音楽認知について興味があるけれど、さすがに649ページ読むのはしんどい。もう少し気軽に学びたいという人には、オリヴァーサックスの『音楽嗜好症』がおすすめ。

音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

現役の脳神経科医であり、世界的に著名な作家であるオリヴァー・サックスが、文字通り「病的」に音楽を摂取する(好むと好まざるとに関わらず)人々を紹介した本。

人間の脳は大変複雑なシステムを構成している。この脳を構成する各部分を、極めて繊細なバランスで協調動作させて、初めて音楽は音楽として認識され、楽しみ、消費できている。この本に登場する人物の多くは、その協調動作が―ほんの少しだけ―狂ってしまった人々である。そのほんの些細な狂いが、音楽の受容・認識を大きく変えてしまう。その症状を詳細に観察することで、人間の脳がどうやって音楽を音楽として処理し、認識するかを逆照射することができる。大変興味深い事例がたくさん掲載されている本。

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

先日、古澤由貴さんのアルバム制作を手伝いました。いくつかあったタイトル案の中に「夜想曲集」というタイトルがあり、このタイトルをGoogleで検索し、偶然見つけた本です。(結局、アルバムのタイトルは「夜想曲集」となりました。アルバムの情報はこちら

普段純文学はあまり読まないのですが、タイトルに惹かれ、表紙のデザインも素敵なので、読んでみることにしました。(文庫版もあるのですが、ハードカバー版の表紙の方が素敵で、古書価格も安かったのでハードカバー版を買いました。)

男と女、老いも若きも、成功者も落伍者もペーペーも。色々な立場と人生を背負い、どこか影と憂いを抱えた人たちが、時にドラマティックに、時にひっそりと出会い、別れ、交錯する様を描いた小品が5編。いずれの話にも、人々を繋ぐ絆の象徴として、音楽が現れます。

著者は日系イギリス人のカズオ・イシグロ氏。霧のロンドンを首都とするお国柄か、発色を抑えてわずかに灰色がかった、古いフィルム映画のような景色を想像しました。

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制服至上 台湾女子高生制服選 日本語版

発売当時、ネットでかなり話題を呼びました。台北にある女子高の制服を丹念に調べて描いたイラスト作品集です。これだけの説明だと、なんだかいわゆる「オタク向け」とか「萌え系」の本ように聞こえてしまいますが、色使いもポージングもタッチも素晴らしく、むしろれっきとした美術書と言っても良いのでは。現存する学校だけでなく、日本統治時代の歴史的な制服も登場します。イラストだからと気を抜かず、服はすべて実際に学校に取材を申し入れて、スカートのプリーツ数まで数えて再現しているというから驚き。

日本語版はまだ第1巻しかでていませんが、台湾ではすでに第2巻が発売され、第3巻の準備が進んでいるとのこと。

…余談ですが、こういう本を扱っているイメージがなかったもので、この本がマイナビから出版されたというのはちょっと意外でした。

How Music Works

書斎の本棚から:台北捷運女孩觀察日誌」を書くために、博客來へアクセスしたところ、トップページにて真白な表紙に「製造音楽」と書かれた本を見つけた。シンプルながらインパクトのある表紙だったので思わずクリックすると、どうやらDavid Byrne(デビッド・バーン)氏の"How Music Works"と言う本の翻訳版らしい。

探してみたが、残念ながら日本語版はまだないようだった。

日本にいながら、台湾の通販サイトに行き、アメリカで出版されたアメリカ在住イギリス人の本を知ることができる。すごい時代になったものだ…。

ちなみに、私の所属するライトノベル研究会のブログにて連載された「ライトノベル翻訳事情」を書いた太田さんは、この連載を書くためにAmazonを中心にインターネットを駆使して、世界中から翻訳ライトノベルを買い集めていました。言語の壁さえ超えれば、読書の世界ももっともっと広がるのですね。(もっと学生時代に英語の勉強をしておけばよかった…)

taipei

2014年に台湾へ旅行した際に、「誠品信義店(台湾の有名書店「誠品書店」が建てた総合デパート)」に立ち寄り、自分へのお土産として買ってきた本です。(残念ながら、Amazonで取り扱っていないので、リンクは台湾版Amazonとも呼ばれる博客來にしています)

台北の地下鉄は料金が安い上に、主要な街をすべてつないでおり、数分間隔で次の列車がやってくるので移動に大変便利です。(路線図)この本は、台北地下鉄(台北捷運公司)の駅にいる女の子にインタビューし、イラスト(マンガと言った方が良い?)で紹介している本。もしかすると、ちょっと下品な感じもしますが、イラストメインだから言葉がわからなくても楽しめるし、駅近隣のランドマークや土地柄を踏まえて描かれているので、記念に丁度好さそう、と思って買いました。

ちなみにこの時一緒に買ったのは、「キノの旅」の台湾版。「制服至上」の台湾版(というかこちらが本家)は手を出しかけましたが踏みとどまりました(笑

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今まで「読書記録」としていたカテゴリ名を、「書斎の本棚から」に変更しました。

読書記録だと、今現在進行形で読んでいる、または読み終えたばかりの本を紹介していると誤解されそうなので。

お気づきとは思いますが「世界の車窓から」のもじりです。念のために申し添えておきますが、私は書斎なんて持っておりません。「自室の本棚から」だとどうも名前が締まらないので、いつか持てたらいいなぁという夢を込めて"書斎"にしてみました。

秋山庄太郎・自選集〈3〉男の年輪女優の肖像 (フォト・ミュゼ)

私は高校入学と同時に写真部に入り、写真の勉強を始めました。顧問の先生がとても良い人で、「写真雑誌の読者投稿や、プロの写真集を見て勉強しなさい」とよく言われたのですが、我が強く、技術とか理論の方に興味があったもので、先生の教えはあまり実践していませんでした。

プロの作品は不勉強な私ですが、数少ない私の知る写真家の中で、断トツに好きなのは秋山庄太郎先生の撮るポートレート写真です。ほとんどの作品は黒バックのスタジオで被写体に強烈な照明を当て、粒子の細かいモノクロ写真に仕立てています。皮膚の質感は触ればその人の温もりが感じられそうなほど生々しく、同時に顔だけが光の固まりとなって画面に浮かび上がることで強烈な印象を与えます。それでいて、被写体の人となりがしっかりと伝わってきます。

秋山庄太郎先生の作品はなかなかお目にかかることができないので、ぜひ作品集が欲しいと思い、Amazonで古本を探してやっと手に入れたのが、この2冊です。

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膨大な本が並ぶ書店で、自分が《次に手に取るべき一冊》に出逢うためには、やみくもに歩き回るだけでは非効率的です。(その非効率さを楽しむというのも、それはそれで魅力的なのですが…)

次に足を運ぶ書店を選ぶ時も、次に手に取る書籍を選ぶときも、大事なのは「自分の興味・関心のあるのはどんな本か?」を明確に整理しておくことです。そこが明確になっていれば、自分に合った書店を見つけやすくなり、《次に手に取るべき一冊》に出会える確率も上がります。

整理の切り口はいくつもあるので、個人の好みに合わせて使い分けます。混在しても構いません。自分はどんな本に「興味関心があるのか」あるいは「興味関心がないのか」が自分の中で明確になっていれば良いのです。

整理の切り口(一例)

ジャンル

書店の棚はだいたい、ジャンルで分けられています。自分の興味あるジャンルを把握しておけば、その棚を探すだけで、興味ある本が次々目に入るはずです。ただ分類の仕方や名称は店舗によって異なるので、ジャンルによって棚を探す時は、店ごとの違いを把握しておく必要があります。

図書館では「日本十進分類法」という決まりに従って本が整理されます。元のしくみが作られてからかなりの年月が経っているので、実状と合っていない分類も正直あるのですが、図書館をよく使う人には便利ですし、ジャンル分類の指針としても使えます。知らない方は一度日本十進分類法の表を眺めて、どこに興味があるかチェックしておくのも良いと思います。
・出版社
どれほど多くの書籍を刊行する大出版社でも、やはり各出版社ごとに個性というものが出てきます。中小出版社になると個性がどんどん色濃くなっていきます。本にたくさん触れるうちに、好きな出版社、嫌いな出版社、特徴的な出版社…なんとなくわかってくるでしょう。

定期刊行物、特に雑誌などを出している出版社なら、雑誌を見てみると出版社の個性がよりわかりやすいように思います。

レーベル・シリーズなど

コミックやライトノベルなど、「レーベル」という区分がある場合は、レーベル単位で好きとか苦手とか考えることもできます。

「シリーズ」は、いわゆる連作となっている作品群を現しますが、「○△× 第1巻」「○△× 第2巻」…のような「続き物」だけでなく、特定テーマに関する複数の本が、~~シリーズとか~~叢書などと言った形でまとめられていることがあります。

著者など

好きな作者がいれば、その人の新作を常に追いかけるというのも良くある事です。あえて作者「など」としたのは、本の著者だけでなく、イラストレータを追いかける人などもいるからです。

形態

文庫、新書、ハードカバー、大型書など、自分が良く手にする本の形態を把握しておくのも時には有効です。おおまかな価格帯がわかりますし、形態ごとにも特徴があります。

 



Encounter / pierre bédat