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📕本の形 🔎本の探し方 💸本を手に入れる場所 📌書斎の本棚から ✒エッセイ

すっかり放置してしまったこのブログ。なんだか色々「役に立つ」ことを書こうとしすぎて疲れてしまった感じがあります。

しかし元々は、私の本棚に並んでいる本をぼちぼちと紹介する場を作ろうと思って設置したブログだということを、ふと思い出しました。

紹介したい本がいろいろ溜まっているので、また仕切り直してぼちぼち書いてみようかと思います。

2500097744_45620f6382_zたくさん本を読みたいけど、お金がかかる…と言う人は多いはず。ちょっとでも安く本を手に入れるには、どうすればよいでしょうか。(参考 「新刊を買う?古本を買う?それとも借りる?」

■無料で読む=借りる

○図書館を利用する

無料で本を読むなら、だれでも思いつくのは図書館です。図書館内で読むか、借り出して一定期間内で読まなければならない、借り物なので書き込みなどできないというデメリットはありますが、本好きには魅力的な場所です。
昔の公共図書館は日中しか開いていないとか、夜に返却ができないなど不便な部分もありましたが、最近はブックポスト返却は当たり前、予約資料をコンビニなどで受け取り・返却できるサービスを行っている所も増えてきました。

また世の中には、地方自治体が運営する図書館だけでなく、民間図書館、個人図書館、専門図書館、学校図書館など、様々な形態の図書館があります。蔵書の規模、分野、使用方法も様々なので、用途に応じて使い分けると良いでしょう。詳しくは別の機会にお話しします。

 ○書店で立ち読みする

「ドラえもん」だったか何か忘れましたが、書店で立ち読みしていると店のおじさんがハタキを持ってやってきて追い出す、というシーンが一種の定型句として描かれていました。

すなわち、「立ち読み=悪」という考え方が一般的だったのですが、最近は考え方がずいぶん変わってきて、大型書店でも立ち読み、座り読みを推奨する店が増えてきています。池袋に本店を持つジュンク堂書店(参考 「あんたのとくちょう何ァンざンす?~チェーン店にも特徴がある~」)はその先駆的な例で、店内のあちこちに椅子が置いてあり、じっくり本を読んで選ぶことができます。あくまでも「購入が前提」の「試し読み」が目的ですので、ここで本を全て読み切ってしまうのはマナー違反ですが、じっくり吟味して買いたい人にはお勧めです。

○マンガ喫茶(インターネットカフェ)

マンガや雑誌は、マンガ喫茶(インターネットカフェ)で読むことができます。大長編のマンガ作品を一気読みすることも可能です。大型のお店では選びきれないほどのマンガが並んでいます。

○本棚のあるカフェ,etc...を利用する

厳密には無料とは言えないかもしれませんが、本棚が設置されていて自由に取り出して読めるお店は結構あります。カフェでコーヒーを頼み、本棚からインスピレーションで選び出してゆったり読むのも良いですね。

また最近は店内の本を読み、気に入ったらそのまま本を購入できる「ブックカフェ」もあります。(新刊本を扱うお店もあれば、古本を扱うお店もあります)

■安く借りる

○レンタルブック(貸本)

かつて「貸本」という商売がありましたが、最近はコミック(マンガ)を中心に「貸しマンガ」「レンタルコミック」を行うお店が出てきています。TSUTAYAは全国的にサービスを展開しています。

■安く買う

○古本を買う

本の状態を気にしないならば、新刊でなく古本を買うことで、安く手に入れることができます。

古本の手に入れ方は様々で、古本屋さんに足を運ぶ他、最近はAmazonのマーケットプレイスを利用したり、ヤフオク・メルカリなどのサービスをうまく活用できると、かなり色々な本を手に入れることができます。具体的な方法、使い分けはまた別の機会に。

○バーゲンブックフェアを利用する

日本では、多くの新刊書籍が「再販売価格維持契約(再販制度)」に従って流通しており、新刊書籍は原則として定価で販売することに決められています。

刊行後6か月を超過した本の中から、出版社が自由価格本としてこの再販制度から外した本が「バーゲンブックフェア」で販売されます。全国の書店で定期的にイベントとして行われており、新刊書籍が低下の数10%オフで購入できます。ただし、販売される書籍のジャンルは限られます。実用書や児童書が多いようです。

○電子書籍を購入する

AmazonのKindleや、AppleのiPadが普及し、タブレットやPCで読む「電子書籍」がじわじわと浸透しています。印刷費や流通費用が掛からない分、電子書籍版の方が安く価格設定されていることが多いので、電子書籍で読むのも安く本を読む一つの方法です。

市販書籍の電子版だけでなく、刊行に必要な初期費用が格安であるために、電子書籍のみで販売される本も数多く存在します。

古本の場合、二人目以降の読者から著者へは一切印税が支払われませんが、電子書籍の場合は安く手に入れた上にちゃんと著者にも印税がフィードバックされるので、自分の応援する作者・著者にちゃんと対価を支払えるという点も特徴です。また、著者としても売り上げ状況がダイレクトに把握できるメリットもあるようです。



Food for the wallet / _Dinkel_

青い光が見えたから 16歳のフィンランド留学記

羽海野チカさんが読んだ感想をTwitterで見つけて、とてもとても興味深かったのでポチった一冊。
丁度積読本が増えていた時期で、なかなか読めずにいたのですが、出張に向かう車中で一気に読みました。

著者の高橋さんは、小学生時代に出会った「ムーミン」のお話しに心惹かれ、小学生にしてフィンランド留学を決意。その後、窮屈で辛い中学時代を過ごすも、どうにかそれを乗り越え、まだフィンランド語もろくに話せない状態で、単身フィンランドの高校に入学します。短~中期留学ではなく、フィンランドの高校を卒業することを目標とし、言葉も文化も違う異国の地で自分らしさを取り戻し、奮闘するお話し。

小学生にして留学を思い立ち、苦節を乗り越えながらもそれを実現する高橋さんのバイタリティに痺れました。また、それを馬鹿にするでもなく、引き留めるでもなく、そっと背中を押してあげた両親が素晴らしいと思います。そしてフィンランドの、のびのびとした文化のすばらしいこと。

異文化交流に興味がある人、北欧の暮らしに興味がある人はもちろん、教育に携わる人にもぜひ読んでもらいたい一冊です。衝動買いしてよかった!

ライトノベル・フロントライン1: 特集 第1回ライトノベル・フロントライン大賞発表!

遅くなりましたが、ついに刊行されました。

前著『ライトノベル・スタディーズ』から早2年、ライトノベル研究会から待望の新刊がお目見えします。その名も『ライトノベル・フロントライン1』。ナンバーが振ってあることからお分かり頂ける通り、ライトノベル研究会から定期刊行物としてお送りします。(年2回刊行を予定)

創刊号の特集では、今回創設された第1回ライトノベル・フロントライン大賞を発表します。

小特集では、氷室冴子や新井素子らが活躍した1980年代の少女小説に注目。各分野の研究者が集まるライトノベル研究会だからこそ提供できる、充実した内容でお送りします。

私はライトノベル・フロントライン大賞およびコミック化作品のレビュアーとして参加しています。
ご興味のある方はぜひご覧ください。

出版社 公式情報はこちら


読書の腕前 (光文社知恵の森文庫)

作者の岡崎氏は本を読むことが趣味であり、フリーライター・書評家を生業としているから、読むことが仕事でもあります。その冊数、年間三千冊というからすごい。その岡崎さんが、普段からどのように書籍に接し、出会い、愛でているかを書き連ねた本がこちら。といっても難しい指南書ではありません。文体はやわらかく、読みやすく、エッセイ集と言っていいと思います。作品紹介があちこちに散りばめられ、その全てに岡崎さんの思い出や思い入れが記されていて、興味をかき立てられること必須。

紹介される本も多岐にわたりますが、基本的には文学作品を好んでいるようです。私は知識を目当てに本を読むことが多いので、ちょっと考え方が異なる所もあるけれども、読んでいて共感したり、驚いたり、勉強になる話が山ほど詰まっていました。つい先ほど通読を終えたので、これからもう一度頭からさらい直して、紹介されている作品の中から、気になるものを抜き出して、次に読む一冊にしたい。


注:本書は、光文社新書から出ていた『読書の腕前』を加筆修正して文庫化したものです。

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

私は新書が好き(そもそもこのブログを書き始めたきっかけの一つは、大学の後輩に「せめて新書ぐらいは読む習慣を持とうや」と文句を垂れたいのをぐっと我慢し続けてきたフラストレーションである)ですが、岩波新書はちょっと雰囲気が固く(テーマ選びも、文体も)、レーベルのカラーとしてやや文系に偏っていることもあって、あまり手に取っていません。そんな私が、書店で見かけて久しぶりに手に取った岩波新書の一冊がこれ。

小学校でも大学でも、会社に入った後でさえ、多人数で物事を決める時は多数決をとるのが一般的です(出来レースになってしまっている場合も多々ありましょうが…)。
もっとも規模の大きな多数決は、やはり選挙でしょう。自らの意見を代弁してくれる(はずの)人を選出する選挙は、民主主義にとって、とりわけ大切なイベントです。そのことを重々承知しつつ、国会議員のスキャンダル話やら、議論とは名ばかりの、子どもじみた喧嘩のようなやりとりを見ると、自分の投じた一票に、本当に意味はあるのかと思ってしまうことがあります。(もちろん、それでも私は選挙に行きますが)

そしてこの本は痛快に、多数決は決して民意を問うのにベストな方法ではなく、むしろ不公平な方法だと説きます。多人数の意見を集約させる方法として多数決を用いるのは、単なる歴史的な習慣にすぎず、(まさにこの本のタイトル通り)多数決を疑う必要がある、といいます。しかも「多数決の不公平さ」や、「よりベターな意見集約方法」が、足し算引き算程度の、とても簡単な計算で数学的に証明されてしまうのです。(これを扱うのが、副題にある「社会的選択理論」)久しぶりに目から鱗が落ちた感覚を味わいました。

数学や数理工学に興味のある人はもちろんのこと、数学や算数なんて大嫌いだけど、選挙・政治に興味のあるという人も、容易に読めると思うのでぜひ手にとってみて欲しい本です。


※残念ながら、まだ書影が出来上がっておりません。あしからず…

時間をかけて準備しておりましたが、やっと皆様にご案内できます。

前著『ライトノベル・スタディーズ』から早2年、ライトノベル研究会から待望の新刊がお目見えします。その名も『ライトノベル・フロントライン1』。ナンバーが振ってあることからお分かり頂ける通り、ライトノベル研究会から定期刊行物としてお送りします。(年2回刊行を予定)

創刊号の特集では、第1回ライトノベル・フロントライン大賞を発表します。2014年の1年間に刊行された新人作家の新作の中から、作品の「質」を重視した選考を行い、大賞および特別賞を発表します。

小特集では、氷室冴子や新井素子らが活躍した1980年代の少女小説に注目。各分野の研究者が集まるライトノベル研究会だからこそ提供できる、充実した内容でお送りします。

2015年9月末刊行予定です。興味を持った方は、忘れないうちにぜひ予約を。

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5997948731_53a5e239a5_z書店の特徴を見極めるためには、書店のある「場所」も大事です。書店も商売ですから、売り上げを伸ばすためにはその場所に集まるお客さんに応じた品ぞろえを目指します。そのため、場所ごとの特徴が良く現れます。

■例1 駅ナカ書店

この記事は大阪に向かう新幹線の中で下書きを書いています。新幹線に乗る前、時間調整を兼ねて駅ナカの書店を2軒回ってから乗車しました。

山椒は小粒でもぴりりと辛い~小型書店の特徴~」の話でも触れていますが、駅ナカの書店には文庫本や新書、コミックが重点的に置かれていることが多いです。店舗面積の問題もあるのでしょうが、東京駅は広いので、駅ナカ書店と言ってもそこそこの面積があります。店舗面積の制約ではなく、電車に持ち込んで読むことを想定し、携行性の高い商品を多く置いているのでしょう。重いハードカバー本もないわけでありませんが、数は限られています。

また、それ以外の商品を見ると、ビジネス書の比率が多いことにも気づきます。新幹線出張のサラリーマンを見込んでのセレクトであることは容易に想像できます。

旅行ガイドや、諸外国語入門の本も目立ちます。こちらは旅行客を見込んでのセレクトでしょう。

■例2 大学

大学とは学問を修める所であり、インターネット全盛の時代とは言え、まだまだ学問に書物は不可欠です。(悲しいかな、遊び呆けて学問にも書物にも、見向きもしない学生もいます…このブログはそんな人に向けて書いています。微力ながら。)

そのため、大学近隣の書店、または学生の通学路上の書店は、その大学に合った品揃えになっていることが多いです。

あんたのとくちょう何ァンざンす?~チェーン店にも特徴がある~」で書いた、ブックファースト新宿本店の例がわかりやすい…というか一つの極端な例で、芸術関係に力を入れる書店にも関わらず、新宿本店は同ビルに入っている専門学校に合わせて、工学や医療関係書籍が充実しています。

もう一つ極端な例は、大学生協のように、大学の構内にある書店でしょう。学期はじめになると、各講義で使用する教科書や参考書がどんと積みあがり、まさにその大学用にカスタマイズされた書店となります。

そこまで極端ではないにしろ、音大の近くには音楽関係書籍が集まりますし、工学系大学近くには理工学の本が集まります。

売るだけでなく、仕入れもお客さんに頼る(全てではないが)古書店は、その傾向がもっと色濃いです。(古書店の話はまた別の機会に。)

■例3 文化施設

美術館や博物館、音楽ホールなど、特定用途向けの文化施設はあちこちにあります。そのような所には、その分野に関心の高い人が集まるので、書店の品揃えもそれに合わせたものになります。

知人が出演するコンサートを観るため、初台にあるオペラシティへ行った際、ビル中の書店を覗いてみると、やはりオペラ・クラシック関係の書籍が充実していました。

ですから、やみくもに歩き回って書店めぐりするよりも、ホールなど何かお出かけする時、ちょっと早めに現地に着くようにして、「ついで」のつもりでふらっと近くの書店を覗いてみる方が、かえって新たな発見を得られるかもしれません。



The View of Kogakuin University / Dick Thomas Johnson

わが母校、工学院大学新宿キャンパスからの眺め、左にそびえ立つのが、ブックファースト新宿本店が入るコクーンタワー。

境界の皇女

位置づけとしては、歴史物の雰囲気をまとわせた異世界ファンタジーになるのでしょうか。表紙の絵は、風にたなびく極細の絹糸のような髪が印象的です。Amazonではライトノベルに区分されていますが、少し判型の大きいノベルス版の本ですので、書店でお探しの際はご注意下さい。

古の呪術を受け継ぐ野椎国第一位皇位継承者である姫 伊古那が、継母の言いつけで5年もの間書庫に幽閉された上、突如火遠理国の王に嫁ぐことを言い渡される。政略結婚と知りつつ向かった火遠理国で運命的な出会いを果たすと共に、陰謀に巻き込まれ…というお話し。

アクションシーンもありますが、派手なリアクションや立ち回りといった視覚的要素に頼らず、登場人物(特に伊古那)の心理を丁寧に描写し、繊細な人間関係を作りこんでいることに好感が持てます。その一方で、情景描写や世界観描写はかなりあっさりしています。読みやすいという意味では良いのですが、せっかく人物描写が魅力的で、伏線になりそうな興味深い設定もたくさんあるので、もっと背景を書き込んで描写すると、映画のように壮大な想像の広がる作品になりそうです。今後も続刊して、壮大な世界が構築されていくことを期待します。

下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)

Twitterなどでも話題になっていたので、知っている方も多いのでは。

野村美月先生と言えば「“文学少女”シリーズ」の作者として知られる、大変有名なライトノベル作家の一人です。また、数々の新人賞選考に関わっている事でも知られます。

その経験を存分に活かして書かれた作品と言えるでしょう。読書好きが高じて、新人賞の下読み(一次選考)を多数手掛ける男子高校生、青。そんな彼の元に、周囲から”氷の淑女”と呼ばれるクラスメイト、氷ノ宮氷雪が書いた作品が届く。その内容は驚いたことにフォント替えや顔文字だらけのライトノベル…というお話し。

ラブコメでありながら、ラノベ執筆のノウハウも学べる。ミステリーの要素もあり、人情話の要素もありと、大変盛りだくさんなエンターテインメント小説。ちょっと展開がご都合主義すぎないか…と思わせておいて、意外なところでおっ?と思わせる演出が出てくる、下世話とわかりやすさと面白さの匙加減はさすが、の一言。

個人的には、作中作(氷ノ宮氷雪の作品)のフルバージョンが読みたいです。野村先生、お願いします。