ライトノベル研究序説

◆書誌情報
出版社による書籍紹介ページ
http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-9188-2.html

本書所収の拙稿「セカイ系と日常系」が、前島賢氏の「セカイ系とは何か―ポスト・エヴァのオタク史」に主要参考文献として紹介されました!

◆解説
◇出版社解説文

アニメ的なイラストがついているエンターテインメント小説であるライトノベルは、メディア・ミックスを繰り返しながら若者だけでなく多くの人々を魅 了している。もはや文化現象とさえいえるライトノベルの歴史、オタク文化・ゲーム・児童小説などとの関連性、解読するための多様な視点、具体的な作品読解 など、ライトノベルをより楽しく読む手法を余すところなく丁寧に伝授する。

◇著者解説文

ここ数年、ライトノベルと呼ばれる形式の小説が若者を中心に人気を集めています。それに伴い、大学の文学部などでは、ライトノベルをテーマとして研究を行いたいという学生が急速に増えています。

その一方で、ライトノベルに関して十分な知識を持った教員はまだ少なく、さらにはライトノベルそのものが、まだまだ一般にはアカデミックな研究対象として見なされていないという問題があります。

そこで、様々な専門を持つメンバーがライトノベル研究会として集まり、ライトノベル研究を行う際の手引となるべく執筆されたのがこの本です。様々な角度からライトノベルの実体を切り取り浮かび上がらせる形で、ライトノベルとは何なのかを考察します。

ライトノベルがたどった複雑な歴史を立体的に網羅した年表、豊富な参考文献紹介など、研究資料としての使いやすさにも配慮しています。

山口は、2つのコラム(「セカイ系と日常系」「情報工学」)を執筆しました。

◆正誤情報

以下の誤りが見つかっています。謹んでお詫びいたします。 (山口の担当箇所のみ示しています)

  • 第2刷
    • p.149 4行目 『イリヤ空、UFOの夏』→『イリヤの空、UFOの夏』
  • 第1刷
    • p.151 注(4) 正しくは次の通り
      • 葵せきな『生徒会の一存 壁要学園生徒会議事録1』(富士見ファンタジア文庫)、富士見書房、二〇〇八年
    • p.151 注(5) 正しくは次の通り
      • 葵せきな『生徒会の三振 壁要学園生徒会議事録3』(富士見ファンタジア文庫)、富士見書房、二〇〇八年

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13597824495_6e75ba1149_zクロスワードや数独(ナンバープレイス)に代表される、「ペンシルパズル」というものがあります。日本には「ニコリ」というパズル専門の出版社(「数独」という名前を命名し、世界的にヒットさせてSUDOKUという国際語にしてしまった会社です)があり、ここのパズルが私も大好きなのです。

この出版社の出す「パズル通信ニコリ」という雑誌に、『地元の図書館に、ニコリの本が多数所蔵されている』という投書がありました。

ペンシルパズル本は書き込んで問題を解いてはじめて意味があるものだと思いますが、図書館の本に書き込みをするのは、大きなマナー違反です。さてこの「書けないパズル」に価値はあるのでしょうか?ちょっと考えればこの矛盾に気づきそうなものですが、司書さんは、いったい何を考えてニコリのパズル本を買っているのでしょう?謎です。

ペンシルパズル本に資料的価値を認めて、遠い将来に残すために蔵書しているのか?
はたまた、購入依頼が入るので仕方なく買って蔵書しているのか?
それとも、図書館にコピー代を落としていってもらう作戦か…?

かつてはこんなマニアックなものも出していました。

 



Crosswords... / j0sh (www.pixael.com)

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4359516555_b9580382c6_z以前ブックオフにて本を漁っていた時の事。気になった本を適当に手に取りながら吟味していると、一冊の本に、しおりのようなものが挟まっていました。

すぱっと開いてみると、中に入っていたのは栞でも出版社のチラシでもなく、1枚の葉書。それも、元所有者に宛てた(と思われる)完全に個人的な葉書。あまりに予想外で信じられないオマケ(?)だったので、思わず本そっちのけで、表・裏・表・裏・と何度も見返してしまいました。

ちょっと本を閉じるとき、丁度良い栞がなくて手近にあるもの(カバンの隅にいつの間にか溜まっているレシートを挟んだりすることが多い)を挟んでしまうことは私も良くあります。ただうっかり放置してそのまま古書店に売ってしまったりすると、ブックオフなどの大手チェーン店では、買い取った本のチェックが行き届いていないことが多いので、そのままプライベートな手紙が放浪の旅に出ていきかねません。注意しましょう。

…古書に挟まったプライベートな手紙など見つけてしまった場合は…とりあえずその本と一緒に手紙を一緒に店員へ渡すのが賢明でしょうね。持ち主に返却できるのかどうかはわかりませんけども。


トップで使用した画像は、コーネル大学図書館が所蔵するもので、かのルーズヴェルト大統領のもの(らしい)です。ふと手に取った古書から、お宝ものの手紙が出てくることが、ひょっとしてあるかも…?

Theodore Roosevelt Postcards / Cornell University Library

かつて大学で学生実験の指導を担当していた頃、そして研究室で後輩の指導をしていた頃、あまりにも学生が本を読まない/読もうとしない学生がいることに驚きました。

工学部の学生でありながら「講談社ブルーバックス新書」の存在を知らない学生がいました。新宿のキャンパスに1年近く通っていながら、紀伊国屋書店やジュンク堂書店(今は撤退してしまいましたが)の存在を知らない学生もいました。

実験レポートに参考文献や引用文献を示すように言っても、インターネットの参照が目立ちます。しかるべき注意さえ払っていれば、ネット資料の参照、引用は構わないと私は考えていますが、内容を吟味したり検証するにあたっては、やはりある程度はネット以外の資料にも目を通す必要があります。

そのような学生を指導する中で気づいたことは、書籍と縁遠い学生はまず「書籍との触れ合い方を知らない」ということ。昨今は朝読書の習慣が小学校で広まるなどして、本(活字媒体)に目を通す重要性は口酸っぱく聞かされていても、じゃあどのように必要な本を手に入れるのか?という事を教わる機会が少ない。だから入口の垣根が低いインターネットに頼るのです。

そこでこのページでは、「どうやって私が次に読む一冊を手に入れているか」を中心に、本との付き合い方を整理してみたいと思います。

先に断っておきますが、あくまでも「私なり」のスタイルなので、万人に有効な保証はありません。読む本の趣味も偏っていますから、あらゆるジャンルに万能な方法ではないかもしれません。それでも、このページを見て、ちょっと本屋に寄ってみようとか、本棚で埃をかぶっていた本に手を伸ばしてみようとか思ってくれる人がいれば、嬉しく思います。

合わせて、教員や、院生や、子どもの保護者などの立場で、若い人の教育に関わっている方へ。試験の成績向上だ、受験対策だといった目先の知識だけはなく、「知識を得るための知識」として、本との触れ合い方を伝授する事が、とても大切ではないでしょうか。このページがその一助となれば幸いです。