5997948731_53a5e239a5_z書店の特徴を見極めるためには、書店のある「場所」も大事です。書店も商売ですから、売り上げを伸ばすためにはその場所に集まるお客さんに応じた品ぞろえを目指します。そのため、場所ごとの特徴が良く現れます。

■例1 駅ナカ書店

この記事は大阪に向かう新幹線の中で下書きを書いています。新幹線に乗る前、時間調整を兼ねて駅ナカの書店を2軒回ってから乗車しました。

山椒は小粒でもぴりりと辛い~小型書店の特徴~」の話でも触れていますが、駅ナカの書店には文庫本や新書、コミックが重点的に置かれていることが多いです。店舗面積の問題もあるのでしょうが、東京駅は広いので、駅ナカ書店と言ってもそこそこの面積があります。店舗面積の制約ではなく、電車に持ち込んで読むことを想定し、携行性の高い商品を多く置いているのでしょう。重いハードカバー本もないわけでありませんが、数は限られています。

また、それ以外の商品を見ると、ビジネス書の比率が多いことにも気づきます。新幹線出張のサラリーマンを見込んでのセレクトであることは容易に想像できます。

旅行ガイドや、諸外国語入門の本も目立ちます。こちらは旅行客を見込んでのセレクトでしょう。

■例2 大学

大学とは学問を修める所であり、インターネット全盛の時代とは言え、まだまだ学問に書物は不可欠です。(悲しいかな、遊び呆けて学問にも書物にも、見向きもしない学生もいます…このブログはそんな人に向けて書いています。微力ながら。)

そのため、大学近隣の書店、または学生の通学路上の書店は、その大学に合った品揃えになっていることが多いです。

あんたのとくちょう何ァンざンす?~チェーン店にも特徴がある~」で書いた、ブックファースト新宿本店の例がわかりやすい…というか一つの極端な例で、芸術関係に力を入れる書店にも関わらず、新宿本店は同ビルに入っている専門学校に合わせて、工学や医療関係書籍が充実しています。

もう一つ極端な例は、大学生協のように、大学の構内にある書店でしょう。学期はじめになると、各講義で使用する教科書や参考書がどんと積みあがり、まさにその大学用にカスタマイズされた書店となります。

そこまで極端ではないにしろ、音大の近くには音楽関係書籍が集まりますし、工学系大学近くには理工学の本が集まります。

売るだけでなく、仕入れもお客さんに頼る(全てではないが)古書店は、その傾向がもっと色濃いです。(古書店の話はまた別の機会に。)

■例3 文化施設

美術館や博物館、音楽ホールなど、特定用途向けの文化施設はあちこちにあります。そのような所には、その分野に関心の高い人が集まるので、書店の品揃えもそれに合わせたものになります。

知人が出演するコンサートを観るため、初台にあるオペラシティへ行った際、ビル中の書店を覗いてみると、やはりオペラ・クラシック関係の書籍が充実していました。

ですから、やみくもに歩き回って書店めぐりするよりも、ホールなど何かお出かけする時、ちょっと早めに現地に着くようにして、「ついで」のつもりでふらっと近くの書店を覗いてみる方が、かえって新たな発見を得られるかもしれません。



The View of Kogakuin University / Dick Thomas Johnson

わが母校、工学院大学新宿キャンパスからの眺め、左にそびえ立つのが、ブックファースト新宿本店が入るコクーンタワー。

境界の皇女

位置づけとしては、歴史物の雰囲気をまとわせた異世界ファンタジーになるのでしょうか。表紙の絵は、風にたなびく極細の絹糸のような髪が印象的です。Amazonではライトノベルに区分されていますが、少し判型の大きいノベルス版の本ですので、書店でお探しの際はご注意下さい。

古の呪術を受け継ぐ野椎国第一位皇位継承者である姫 伊古那が、継母の言いつけで5年もの間書庫に幽閉された上、突如火遠理国の王に嫁ぐことを言い渡される。政略結婚と知りつつ向かった火遠理国で運命的な出会いを果たすと共に、陰謀に巻き込まれ…というお話し。

アクションシーンもありますが、派手なリアクションや立ち回りといった視覚的要素に頼らず、登場人物(特に伊古那)の心理を丁寧に描写し、繊細な人間関係を作りこんでいることに好感が持てます。その一方で、情景描写や世界観描写はかなりあっさりしています。読みやすいという意味では良いのですが、せっかく人物描写が魅力的で、伏線になりそうな興味深い設定もたくさんあるので、もっと背景を書き込んで描写すると、映画のように壮大な想像の広がる作品になりそうです。今後も続刊して、壮大な世界が構築されていくことを期待します。

下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)

Twitterなどでも話題になっていたので、知っている方も多いのでは。

野村美月先生と言えば「“文学少女”シリーズ」の作者として知られる、大変有名なライトノベル作家の一人です。また、数々の新人賞選考に関わっている事でも知られます。

その経験を存分に活かして書かれた作品と言えるでしょう。読書好きが高じて、新人賞の下読み(一次選考)を多数手掛ける男子高校生、青。そんな彼の元に、周囲から”氷の淑女”と呼ばれるクラスメイト、氷ノ宮氷雪が書いた作品が届く。その内容は驚いたことにフォント替えや顔文字だらけのライトノベル…というお話し。

ラブコメでありながら、ラノベ執筆のノウハウも学べる。ミステリーの要素もあり、人情話の要素もありと、大変盛りだくさんなエンターテインメント小説。ちょっと展開がご都合主義すぎないか…と思わせておいて、意外なところでおっ?と思わせる演出が出てくる、下世話とわかりやすさと面白さの匙加減はさすが、の一言。

個人的には、作中作(氷ノ宮氷雪の作品)のフルバージョンが読みたいです。野村先生、お願いします。

151427827_1e49c04134_z新宿三大大型書店

私はかつて新宿の大学に通っていましたので、新宿にある主要な書店には時間のある時よく立ち寄りました(否、ない時も現実逃避のために通っていた気がしますが…)。新宿には3つの大型書店がありました。すなわち「紀伊国屋書店(新宿本店並びに新宿南店)」「ジュンク堂書店」「ブックファースト(新宿店並びにルミネ新宿店」の3つです。(ただし、ジュンク堂書店はすでに新宿から撤退しておりますし、ブックファースト新宿店は最近できたばかりなので、これらの書店が全て同時に営業していたわけではありません)いずれも大型書店かつチェーン店という部分は共通していますが、それぞれ性格が異なるので、目当ての本や気分によって使い分けておりました。あらゆるジャンルの本を揃えているように見える大型書店でも、チェーンごとの特徴、カラーというものは見えてくるようにおもいます。まったく個人的な印象でしかありませんが、新宿にある(あった)これら3つのチェーンには、次のような特徴があると感じています。

■紀伊国屋書店

新宿の書店の中でも特に有名なお店ではないかと思います。新宿本店、新宿南店共に、アクセスしやすい低階層に文芸書や文庫本を集めており、文学・文芸分野が中心となっているように感じます。ただし、新宿本店に関しては、コミック関係書籍のみ独立して別館になっています。単にスペースの問題なのか、営業上の戦略なのかはわかりませんが。

まったくの余談ですが、新宿本店はエレベーターガール・ボーイを日中毎日常駐させている、今となっては貴重なお店です。びしっと背筋を伸ばし、丁寧に応対してくれる姿を見ると、こちらも気分良くなります。

■ジュンク堂書店

紀伊国屋書店新宿本店のはす向かい、現在ビックロ(ビッグカメラ+ユニクロ)があるビル(旧三越アルコット)の中にテナントとして入っていました。現在新宿からは撤退しているため、池袋にある本店に幾必要があります。ジュンク堂書店は店内のあちこちにイスを置き、立ち読みせずとも座り読みしながら本を選べる上、店内にカフェを設置してお茶を飲みながら本を選べるお店づくりを早くから行っているのが特徴です。ジャンルとしては自然科学・工業分野が強く、学生時代は良く入り浸っていました。

■ブックファースト

ブックファーストは、大学に在学している間はルミネ新宿店しかありませんでした。大学院在籍中にモード学園コクーンタワーが完成すると同時にそのテナントとして新宿店が開店しました。ルミネ新宿店、新宿店共に営業時間が長く遅くまでやっていることが特徴で、帰りの遅かった私にはありがたかったです。ジャンルとしては芸術・デザイン分野や生活実用書に力が入っているように思います。ただし新宿店に関しては、同じビルの中にモード学園系列の首都医校(医療系専門学校)やHAL東京(工業系専門学校)が入っていることから、医療・工学系の書籍も充実しています。

おわりに

新宿にある(あった)三大大型書店を例に、チェーン店ごとに特徴があるというお話をしました。ただし同じチェーン店であっても、違う要因が作用して異なる特徴が現れることもあります。それについてはまた別項で。



Soroban / teclasorg

(余談):この記事にどうしてそろばんの写真が入るのか、わかってもらえる人はどれだけいるのでしょうか…