読書の腕前 (光文社知恵の森文庫)

作者の岡崎氏は本を読むことが趣味であり、フリーライター・書評家を生業としているから、読むことが仕事でもあります。その冊数、年間三千冊というからすごい。その岡崎さんが、普段からどのように書籍に接し、出会い、愛でているかを書き連ねた本がこちら。といっても難しい指南書ではありません。文体はやわらかく、読みやすく、エッセイ集と言っていいと思います。作品紹介があちこちに散りばめられ、その全てに岡崎さんの思い出や思い入れが記されていて、興味をかき立てられること必須。

紹介される本も多岐にわたりますが、基本的には文学作品を好んでいるようです。私は知識を目当てに本を読むことが多いので、ちょっと考え方が異なる所もあるけれども、読んでいて共感したり、驚いたり、勉強になる話が山ほど詰まっていました。つい先ほど通読を終えたので、これからもう一度頭からさらい直して、紹介されている作品の中から、気になるものを抜き出して、次に読む一冊にしたい。


注:本書は、光文社新書から出ていた『読書の腕前』を加筆修正して文庫化したものです。

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

私は新書が好き(そもそもこのブログを書き始めたきっかけの一つは、大学の後輩に「せめて新書ぐらいは読む習慣を持とうや」と文句を垂れたいのをぐっと我慢し続けてきたフラストレーションである)ですが、岩波新書はちょっと雰囲気が固く(テーマ選びも、文体も)、レーベルのカラーとしてやや文系に偏っていることもあって、あまり手に取っていません。そんな私が、書店で見かけて久しぶりに手に取った岩波新書の一冊がこれ。

小学校でも大学でも、会社に入った後でさえ、多人数で物事を決める時は多数決をとるのが一般的です(出来レースになってしまっている場合も多々ありましょうが…)。
もっとも規模の大きな多数決は、やはり選挙でしょう。自らの意見を代弁してくれる(はずの)人を選出する選挙は、民主主義にとって、とりわけ大切なイベントです。そのことを重々承知しつつ、国会議員のスキャンダル話やら、議論とは名ばかりの、子どもじみた喧嘩のようなやりとりを見ると、自分の投じた一票に、本当に意味はあるのかと思ってしまうことがあります。(もちろん、それでも私は選挙に行きますが)

そしてこの本は痛快に、多数決は決して民意を問うのにベストな方法ではなく、むしろ不公平な方法だと説きます。多人数の意見を集約させる方法として多数決を用いるのは、単なる歴史的な習慣にすぎず、(まさにこの本のタイトル通り)多数決を疑う必要がある、といいます。しかも「多数決の不公平さ」や、「よりベターな意見集約方法」が、足し算引き算程度の、とても簡単な計算で数学的に証明されてしまうのです。(これを扱うのが、副題にある「社会的選択理論」)久しぶりに目から鱗が落ちた感覚を味わいました。

数学や数理工学に興味のある人はもちろんのこと、数学や算数なんて大嫌いだけど、選挙・政治に興味のあるという人も、容易に読めると思うのでぜひ手にとってみて欲しい本です。


※残念ながら、まだ書影が出来上がっておりません。あしからず…

時間をかけて準備しておりましたが、やっと皆様にご案内できます。

前著『ライトノベル・スタディーズ』から早2年、ライトノベル研究会から待望の新刊がお目見えします。その名も『ライトノベル・フロントライン1』。ナンバーが振ってあることからお分かり頂ける通り、ライトノベル研究会から定期刊行物としてお送りします。(年2回刊行を予定)

創刊号の特集では、第1回ライトノベル・フロントライン大賞を発表します。2014年の1年間に刊行された新人作家の新作の中から、作品の「質」を重視した選考を行い、大賞および特別賞を発表します。

小特集では、氷室冴子や新井素子らが活躍した1980年代の少女小説に注目。各分野の研究者が集まるライトノベル研究会だからこそ提供できる、充実した内容でお送りします。

2015年9月末刊行予定です。興味を持った方は、忘れないうちにぜひ予約を。

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