書斎の本棚から:多数決を疑うーー社会的選択理論とは何か

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

私は新書が好き(そもそもこのブログを書き始めたきっかけの一つは、大学の後輩に「せめて新書ぐらいは読む習慣を持とうや」と文句を垂れたいのをぐっと我慢し続けてきたフラストレーションである)ですが、岩波新書はちょっと雰囲気が固く(テーマ選びも、文体も)、レーベルのカラーとしてやや文系に偏っていることもあって、あまり手に取っていません。そんな私が、書店で見かけて久しぶりに手に取った岩波新書の一冊がこれ。

小学校でも大学でも、会社に入った後でさえ、多人数で物事を決める時は多数決をとるのが一般的です(出来レースになってしまっている場合も多々ありましょうが…)。
もっとも規模の大きな多数決は、やはり選挙でしょう。自らの意見を代弁してくれる(はずの)人を選出する選挙は、民主主義にとって、とりわけ大切なイベントです。そのことを重々承知しつつ、国会議員のスキャンダル話やら、議論とは名ばかりの、子どもじみた喧嘩のようなやりとりを見ると、自分の投じた一票に、本当に意味はあるのかと思ってしまうことがあります。(もちろん、それでも私は選挙に行きますが)

そしてこの本は痛快に、多数決は決して民意を問うのにベストな方法ではなく、むしろ不公平な方法だと説きます。多人数の意見を集約させる方法として多数決を用いるのは、単なる歴史的な習慣にすぎず、(まさにこの本のタイトル通り)多数決を疑う必要がある、といいます。しかも「多数決の不公平さ」や、「よりベターな意見集約方法」が、足し算引き算程度の、とても簡単な計算で数学的に証明されてしまうのです。(これを扱うのが、副題にある「社会的選択理論」)久しぶりに目から鱗が落ちた感覚を味わいました。

数学や数理工学に興味のある人はもちろんのこと、数学や算数なんて大嫌いだけど、選挙・政治に興味のあるという人も、容易に読めると思うのでぜひ手にとってみて欲しい本です。


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