小さな棚でも立派な専門店~あるアルバイトのお話~

6743831443_8aa84be590_z大学時代、とある書店でアルバイトをしている後輩がいました。
彼の勤めていた書店はチェーン店ではあるものの、駅の地下街の片隅にある、
フロア面積の小さな、目立たない書店でした。

アルバイトを始めてしばらくして、彼はアルバイトながら、「ライトノベル」の棚担当者に
任命され、ライトノベル棚に入れる商品の選定・注文を任されるようになりました。
ライトノベル棚と言っても、与えられたのは本棚のうち2列だけ。文庫本50~60冊くらいを収めるともういっぱいになってしまいます。ライトノベルは月に100冊以上の新作が発売され、しかも人気作になると10巻、20巻以上のシリーズになります。60冊が入る棚では、最新刊の
ライトノベルを紹介することすら難しいのです。全国的にライトノベルブームになったとはいえ、立地の関係であまり若い人が立ち寄るお店でなく、しかも近所にはコミック・サブカル専門店もあることから、あまり力を入れていなかったのでしょう。

さて、そんな小さなライトノベル棚を任された彼はどうしたか。なんとその貴重な棚のうち1/5くらいを、自分の趣味であるTRPG(Table talk Roll Playing Game)の本(リプレイ本&ルールブック)に割り当て、常設しました。TRPGの本は今でも、かなりニッチジャンルの本(一般論として話しています。TRPG好きな方、見ていたらごめんなさい…)で、アニメ・マンガ・ライトノベルなどを専門に扱う書店でもあまり多くは見かけません。

とても貴重な棚の一部を、TRPGというニッチジャンルの本に割り当てた結果、どうなったと思いますか。TRPGファンの中でじわじわと「あの店にはTRPGの本が常にある」という噂が広まり、TRPGファンが本を求めにやってくるようになりました。そして、TRPGの本の「ついで」に、その横に並ぶライトノベルもセットで買ってくれるようになったのです。おかげでこのお店は、TRPGファンという固定客を取り込むことに成功し、結果としてライトノベルの売り上げも急上昇。あれよあれよと言う間に、ライトノベル棚は拡張され、最終的には棚2つ全てがライトノベルに割り当てられるようになり、ライトノベル最大手「電撃文庫」の優先配本を受けられるまでに成長しました。(電撃文庫は、売り上げ実績の多い書店から優先的に商品を卸す方式を採用しており、優先配本を受けられるか否かで、確保できる商品数が大きく異なる)

お店自体は小規模でも、ジャンルを限れば(今回の場合はTRPGというジャンル)専門店顔負けの品揃えがある場合がある…という、一つの実例でした。



Gaming Dice / Skakerman

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