N.Y.Cityのまちかど
How_to_Handle_Unit
単位の扱い方(小ネタ)
はじめに
学生を見ていると、単位の扱いを苦手としている人が多いようです。
理由は人それぞれで、そもそも計算(四則演算)から苦手である人も中にはいるのですが、 単位のしくみ、単位の意味を正しく理解できていない学生が多くいるように思います。
オンスとかフィートとか普段あまり使わない単位の細かい変換定数を一々暗記する必要はないですが、そういう定数はGoogleなどで調べつつ、必要な単位換算がサクサクできるくらい、単位の扱いに慣れてくれると嬉しいなぁと感じたので、メモしておきます。
実例
プリント基板の銅箔厚
プリント基板の発注をするためにはいろいろな製作条件を指示する必要があります。
例えば基板上の配線となる銅箔の厚さ(銅箔厚)は、特に大電流を流す回路や減衰を嫌う繊細な微小信号を扱う基板では大事なポイントになります。プリント基板の発注をしようとしたところ、設計者の指示は35マイクロメートル([μm]=1/1000000[m])なのに、基板製作業者の申込フォームはオンス([oz])単位でした。
この基板はそれほどシビアな設計のものではないので、おそらく標準の1[oz]で大丈夫なはずと思いつつ、ちょこちょこ調べながら念のため検算しました。
-
1[oz]=28.3495 [g(/ft^2)]
- オンスの定義。プリント基板の銅箔厚をオンスで表す場合、これは1フィート平方あたりの質量を表す。
- =304.8333333 [g(/m^2)]
- 平方フィートを平方メートルに換算
- =34.02157738[cm^3(/m^2)]
- 銅の密度8.96[g/cm^3]を用いて質量を体積に換算
- =3.40216*(10^-5)[m^3(/m^2)]
- 立方センチメートルを立方メートルに換算
- =3.40216*(10^-5)[m]
- 元々この質量は平方メートル当たりの重さなので、この体積は銅箔厚に等しい
- =34.0216[μm]
- メートルをマイクロメートルに換算
というわけで、銅箔厚1[oz]は34.0216[μm]となり、35[μm]であった発注指示は、1[oz]と読み替えて良さそうという事が確認できます。
マイクロメートルからオンスへの変換は、上記式とコメントを参考に各自考えてみよう。
指定速度でラジコンを走らせるためには?
授業中に思い付きで学生に出した問題。アドリブで作った割にはそこそこリアルな数値になりました。
ステッピングモータ(基本ステップ角度=1.8[Deg])に回転数比が1(入力):30(出力)を挟んで直径4[cm]のタイヤが付いたラジコンがある。このラジコンを50[cm/sec]で走らせたいとき、ステッピングモータは何[ppm = pulse/min]で駆動すればよいか。なお励磁方法は2相励磁とし、ステッピングモータの脱調やタイヤの空転は起こらないものとする。
最終的な出力を50[cm/sec]にしたいので、ここから逆算して求めていきます。
-
ラジコンを50[cm/sec]で走らせるということは、タイヤの外周が50[cm/sec]動くように走らせればよい。
- タイヤの空転が起こらないならば、タイヤが回った分だけラジコンが前に押し出されるわけだから、当たり前。
- タイヤの外周長は円の周長の公式から、4π[cm]
- l=2πr=dπ(ただしrは円の半径、dは円の直径)
- 1回転につきラジコンが4π[cm]進むので、タイヤの回転速度はn_tire = (50/4π) [rot/min]
- 後の計算を楽にするために円周率はそのままにしておく。ちなみに計算するとn_tire≒3.979 [rot/min]
- ギアの入力側(すなわちステッピングモータの回転速度)はn_motor = (50/4π)/30 = (5/12π) [rot/min]
- 回転数比1:30の関係からタイヤの回転速度はギアによって30倍に加速されているとわかるので、入力側の回転数を逆算している
- ステッピングモータを2相励磁すると、1パルスでステッピングモータの軸は基本ステップ角度動く。基本ステップ角度が1.8[Deg]だから、このステッピングモータは(360/1.8)=200[pulse]で1回転する(200[pulse/rot])。
- なお、1-2相励磁の場合は1パルスで動く角度が基本ステップ角度の半分になることに注意。
- f_pulse[pulse/min] = 200[pulse/rot] × (5/12π) [rot/min] = (250/3π)[pulse/min]≒26.53[pulse/min]
- 1分間当たりのモータ回転数n_moterを得るための、1分あたりパルス数[pulse/min]は、1回転に必要なパルス数を1分当たりの回転数にかければよい。
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