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How_to_Choice_Electronic_Parts

電子部品の選び方

はじめに

電子工作をしようという時、回路の設計をする事自体にも知識が必要ですが、「部品を選ぶ」という行為にもまた知識が必要です。 きちんと部品指定までされている回路図・設計資料があれば、書いてある部品をそのまま用意すれば良いですが、 例えば「指定されている部品が廃番・製造中止になっている!」「部品がマニアックすぎて入手できない!」という場合もありますし、 そもそもオリジナルの回路であれば部品剪定も自分で行わなければいけません。部品ごとに注意しなければならないポイントがあるので、部品の選定というのはなかなか難しいのです。

そこでこのページでは、部品の基本的な選定方法を、部品の種類別に整理していきます。

基本的な考え方

ポイント1:まずあらかじめ、決めておくべきことを決めておく

まず、完成品を「どんな環境で使用するのか」を明確にしておきます。例えば以下のような項目を考えます。

周辺温度
電子回路は温度が低くても高くても動作が困難になったり、壊れやすくなったりする
周辺湿度や水分量
湿度が高いと部品が故障したり電線やはんだ付け部分が腐食する可能性が高くなる。水滴が入る環境では短絡の危険もある。
電源品質
電源が安定しない(電圧変動・電池の消耗など)場合、動作に影響する。
連続使用時間
電源入れっぱなしで使ったり、逆に頻繁にON/OFFを繰り返す使い方は、故障率を高める可能性がある。
使用頻度
頻繁に動作状況が変わるものは故障率が高まる。
空気の清浄度
チリや粉じんの多い環境で使用する場合、故障率が高くなる。潮風が入る環境では腐食しやすくなる。
紫外線量・放射線量
強い紫外線は樹脂や塗装を急速に劣化させる。自然・人工を問わず放射線が入りやすい環境ではメモリやマイコンの誤動作が発生する可能性がある。
周辺光量
光を使う回路では、周辺光量が誤動作を招く可能性がある。

回路図があれば、どんな種類の部品が必要なのか(抵抗とか、コンデンサとか、トランジスタとか)は決まっているはずです(まさか決まっていないとしたら、回路設計が先!)。すべての部品に対して、

  1. 「絶対に死守しなければならない特性」(優先度高)
  2. 「ある程度幅をもって選べる特性」
  3. 「できれば守っておきたい特性」
  4. 「特に意識しなくても良い特性」(優先度低) を考えておくことが必要です。優先度を決めておくことが大事です。

ここでいう特性とは、例えば以下のようなものです。

電気的特性
抵抗の抵抗値、コンデンサの静電容量、トランジスタの定格電流など、部品の動作に関する基本的な特性
寸法
部品の外形寸法
耐熱性
どれだけの熱に耐えられるのか
耐環境性
劣悪な動作環境にどれだけ耐えられるのか
機械的特性
強度など
価格
普通は、価格は低く抑えたいはず
入手性
そもそも部品が入手できなければ使うことができない

ポイント2:スタンダードから派生させて選んでいく

世の中にはたくさんの電子部品メーカーがあり、たくさんの電子部品を作っています。その中からやみくもに選ぼうとしても無駄に時間がかかるので、各部品ごとにできるだけ使いやすい「スタンダード」を決めておいて、そこから要求に合わない部分を調整して選んでいくのが良い方法です。

それができない場合(スタンダードがわからない特殊な部品など)は、使えそうな部品を片っ端から調べていくことになります。

ポイント3:最後は「エイヤァ!」の場合もある

部品は理屈で選ばなければいけません。プロのエンジニアとしては、いかなる時も部品の選定理由を理屈で説明できなければならず、適当に決めることはあってはならない事です。

…が、理屈で絞っていっても、最後の一息が理屈で決められない(決めようがない)場合があります。あるいは優先度の低い「特に意識しなくても良い特性」のうち、どの特性を先に決めるかで悩む場合があります。本当にどうにもならない場合は「エイヤァ!」と勘と経験で決めざるを得ない場合もあります。(しかしこれは本当に最後の手段です。)

部品の選び方

抵抗

最も基本と言ってよいパッシブ(受動)部品。電圧から電流を作ったり、分圧したりなど

基準部品

基準は「炭素被膜(カーボン)抵抗(定格1/4W 誤差±5%)」です。許容誤差5%なので「E24」系列の中から値を選ぶことになります。

応用

抵抗の場合、抵抗値・サイズ(寸法)・(抵抗値)精度・定格電力が主な選定ポイントです。

  • サイズが大きい
    • 定格1/6Wのカーボン抵抗を選べば多少サイズが小さくなりますが、あまり使うことはありません。もしくはチップ抵抗を検討しましょう。(縦付けという技もあります)
  • 精度不足
    • ±5%では精度が不足する場合は、金属皮膜抵抗を使います。(通常±1%ですが、さらに高精度のものもあります)
  • 電力オーバー
    • カーボン抵抗・金属皮膜ならば1/2W,1Wが選べます。
    • それ以上の電力定格が必要な場合は金属皮膜抵抗(酸化金属皮膜とは別なので注意)、セメント抵抗、ホーロー抵抗、巻線抵抗、メタルクラッド抵抗などが選べます。(サイズが大きくなること、発熱すること、インダクタンス成分が増える事に注意)
  • 可変
    • 抵抗を可変させたい場合は「可変抵抗(ヴォリューム)」や「半固定抵抗(トリマ)」を選びます。可変抵抗(ヴォリューム)は指で操作して抵抗値を変更できるもので、一般的なものはつまみを回して操作します。つまみを直線状に動かして変化させるもの(スライド式)もあります。また、つまみの動きに連動して2回路以上が連動して動くものもあります。半固定抵抗はドライバなどで頭を回し、抵抗値を決めるものです。多回転のものは、つまみの動きに対して抵抗値の変化がゆるやかなので、高精度な調整に向きます。
    • 半固定抵抗はつまみがなく、ドライバなどで回転して抵抗値を調整するものです。一般に小型で、2回路以上のものはほとんどありません。工場出荷時に調整したら後はほとんど動かさないような抵抗、多少操作性が悪くともコンパクトに納めたいときなどに使用します。

コンデンサ

これも抵抗と並んで代表的なパッシブ(受動)部品。低周波を遮断し、高周波を通す特性を生かしてフィルタを作ったり、電荷をためる働きを利用して電圧の安定に使うなど。

基準部品

よく使うのは、各種ICの電源(Vcc-GND間)に接続するパスコン(バイパスコンデンサ…電源ノイズがICに直接侵入するのを防ぎ、負荷急変により瞬間的に電流が必要になった時に電荷補充をサポートするコンデンサ)かと思いますが、これには0.01μFまたは0.1μFの積層セラミックコンデンサ(通称積セラ)が常用されます。(厳密には、除去したいノイズの閾値周波数や電圧補助のための蓄電量から計算する必要がありますが、よほど高速の回路でもない限り、0.01~0.1μFで事足ります。

応用

コンデンサの場合、耐圧・容量・極性・周波数特性・温度特性・サイズ(寸法)が主な選定ポイントです。

  • 耐圧
    • コンデンサは、定格電圧以上の電圧が加わると(電力ではない)破損するため、定格電圧のチェックが欠かせません。コンデンサに加わるであろう最大電圧から耐圧を選定する必要があります。一般に耐圧の高いコンデンサは大きくなるため、むやみに耐圧の高いコンデンサを選べばよいわけではありません。
  • 容量
    • 積層セラミックコンデンサはせいぜい1μF程度までなので、これ以上に容量が必要な場合はアルミ電解コンデンサを検討します。さらに容量が足りない場合は電気二重層キャパシタ(EDLC)を検討します。ただし、電解コンデンサは周波数特性があまりよくないので、扱う信号によっては注意が必要です。またサイズが大きいのも欠点です。
    • タンタル(電解)コンデンサを使用すると、アルミ電解コンデンサよりも小型で周波数特性も良いですが、極端に「逆電圧に弱い」特徴があります。また逆電圧などで壊れると「ショート(短絡)モード」で壊れることが多く、大電流が流れて他の部分も破損するなどの二次被害が出やすいのも特徴です。タンタルコンデンサを使う場合はヒューズなどの保護素子を入れたり、定電流回路などで必要以上の電流が流れないように工夫が必要です。
    • オーディオ回路向けに設計された高性能品もありますが、高いです。
  • 周波数特性
    • フィルタ回路などで高周波まで精度良く働かせたい場合は、周波数特性の良いフィルムコンデンサを使用します。フィルムの素材により、スチロールやポリエステルなどのシュルがあります。
  • 温度特性
    • コンデンサは周辺温度によって特性が変化しやすいので、メーカーカタログなどで温度特性をきちんと確認してから選定する必要があります。

現在ご覧のページの最終更新日時は2020/04/01 23:36:58です。

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