N.Y.Cityのまちかど

How to read/write structural presentation

構造的プレゼンテーションの読み方・書き方

はじめに

この文章は、筆者が多くの人や書物などから学び、自ら論文やプレゼンテーション資料を 作成したり、実験指導者や先輩として学生にレポートや論文の書き方を指導した経験を もとにして、説得力のある論文やプレゼンテーション資料を作るためのノウハウを メモ書き程度にまとめたものです。

本文章の多くは学術論文と、その発表プレゼンテーションを想定して書いていますが、 学生実験の報告書(レポート)や、その他のプレゼンテーションでも通用する内容を 書いている(つもり)です。

タイトルにある「構造的プレゼンテーション」という用語は、文献[1]に基づきます。

論文の構成と論理展開(説得力ある説明の基礎技術)

論文の標準構成

一般的な論文は、以下の内容(と展開)で構成される。

【論文の構成】
  • 表題 <Title>
  • 著者名、所属 <Author,Affiliates>
    • 主研究者が先頭、指導教官は末尾に置くのが一般的。(学会などによって例外もある)
    • その他の共同研究者がいる場合は、序列、もしくは貢献度に沿って並べるのが一般的。
  • 要旨(概要、あらまし)<Abstract>
    • 短い論文等では不要な場合もある。
  • はじめに (序、序言) <Introduction>
  • 内容、本文
    • 研究目的
    • 理論・先行研究紹介
    • 実験手順・方法
    • 実験結果
    • その他
  • 結論(結果、結び) <Conclusion>
  • 謝辞<Acknowledgment>
    • 不要な場合もある。
  • 参考文献 <Bibliography,Reference>

論文の最小要件は「目的」と「結論」である

論文で言わなければならないことは、本質的には次の2点しかない。

「目的」
その研究で著者は何がしたいのか、その論文で何が言いたいのか。
「結論」
その研究で著者は何ができたのか、その論文で何が言えたのか。

この2点がはっきりしない論文はそもそも論文ではない。 また、一般にこの2つは1対1で内容が対応する。(目的で掲げたことが達成 できた/できなかったことを結論で示す)

「目的」「結論」以外の論文の構成項目は、両者に従属する

論文の必要要件が「目的」「結論」の2つであるということは、逆に言えばその他の 構成項目は、この2つに「従属する」項目であると言える。

その他の構成項目は、この2つから逆にたどっていくことでその存在理由を示すことが可能になる。

「結論」を裏付けるために
  • 目的と結論を並べただけでは、『本当にそんな結論が得られるのか?』という疑問に反論できない。
    • 「結論」を裏付けるためには「実験結果」が必要となる。客観的方法に基づいて得られた実験結果を「結論」の証拠とする。
  • 「実験結果」を示しただけでは、『本当にそんな結果が得られるのか?』という疑問に反論できない。
    • 「実験結果」を裏付けるためには「実験方法」が必要となる。実験方法が示されていれば、論文を読んだ人は追証実験*1が可能となる。
  • 「実験方法」を示しただけでは、『その実験に意味があるのか?』『都合の良いデータを取り出せるような恣意的な実験を行っているだけではないか?』という疑問に反論できない。
    • 「実験方法」の妥当性を示すために「理論」が必要となる。理論は実験方法や得られたデータの解釈が客観的にみて妥当であることを示すためにある。
    • 「先行研究」もまた「実験方法」の妥当性を示す。特に、発表者と無関係な他の研究者が行っている先行研究を示すことで、多くの研究者が注目し研究を推進している内容であることを強調する。
      • 「先行研究」の存在が「実験目的」の決定に大きな影響を及ぼしている場合は「目的」の前に「先行研究」を示す場合もあり得る。
「目的」を裏付けるために
  • 「目的」を示しただけでは、『その目的を果たすことで何の意味があるのか?』『単にやりたいことをやってみただけではないのか?』という疑問に反論できない。
    • 「目的」の存在理由を示し、客観的に、社会的必要性、科学的意義、ニーズ、シーズを「はじめに」で主張、立証する。*2
  • ただし、工学(Engineering)の場合は必須項目だが、科学(Science)の場合はそうでもない。科学の場合は純粋な知的探求を目的とすることが許される事が多い。(知的探求の結果得られた結果が数十年、数百年後に突如として実生活に応用されるということもまた良くあること)
論文の価値を高めるために
  • 程度の差こそあれ、論文は専門家の手で書かれた専門的な文章である。しかし、読む人が必ずしもその分野の専門家であるとは限らない
    • 論文の価値をはっきり主張するため、たとえ専門家による専門家のための論文であってもできるだけわかりやすく書く努力が要求される
    • できるならば、全ての専門用語は広辞苑に掲載されているレベルの平易な言葉で全て説明しつくされていることが望ましいが、紙幅に限りのある論文では難しい。そこで論文に収まらない用語解説や理論解説は、参考文献を示すことで省略し、結果だけを引用して自分の論文の論理展開に用いることができる。この場合、引用部分の責任は参照先文献の著者が担う。(そこに書いてあった事項が間違っていたとしても、参照先をきちんと明示している限り、責任を参照先に押しつけられる。*3
  • 「謝辞」は当然、資料提供、知識提供、機材提供などで研究に協力してくれた人、団体への感謝を示すものである。
    • しかし同時にネームバリューのある人・団体が研究に協力してくれた事実を匂わすことで間接的に論文の価値を高める働きを持つ場合がある
  • 論文の最終的な価値は引用回数を指標として判断されることが多い
    • 引用されるためにはまずその論文が多くの研究者の目に止まり、読まれることが必須である。
    • 関心のある人々に論文を読んでもらうには適切な「題目」が必須である。
    • 「概要」は短時間でその論文の主張を理解し、詳しく読もうという気持ちに訴求するために必須
    • 「著者名」「所属」は論文の保証人である。著者名が明示されていない論文は信頼性に欠けると思われ、当然評価は大きく下がる。

Ronbun.PNG

論文の読み方

論文を読みなれている人は次の段階を追って論文を読み、「必要なくなった」「興味を失った」所で読むのをやめる。正しく書かれた論文である限り、以下に示す段階を追って読むと「最小限の時間・労力」で「必要十分な理解」ができる。前項に示した各項目の存在理由を考えれば、その理由は理解できるだろう。

  1. 「題目」&「著者・所属」
  2. 「要旨」
  3. 「目的」「結論」
  4. 「実験結果」「実験方法」
  5. 「理論」その他

逆に言えば良くできた論文は上記の手順に従って読んで、段階を追って理解を深められる必要がある

Ronbun_read.PNG

プレゼンテーション資料の構成

プレゼンテーション資料の作成手段と目的

  • 理工系の研究発表では論文や予稿の他に、発表資料としてスライド資料を作成することが一般的。
    • 昔は文字通り、スライドフィルム(ポジフィルム)やOHP*4を用いることが多かった。
    • 現在ではPC+プレゼンテーションソフトウェア(PowerPoint、OpenOffice.org Impress、KeyNoteなど)+プロジェクタ を利用するのが一般的。
  • プレゼンテーション資料を作成する目的は、発表を聞くにあたって聴衆が議論に取り残されないよう、発表の要点を視覚に訴えて示すためにある。
  • 会議などでは、スライド資料をそのまま印刷して配布資料とすることも多い。
  • 論理設計、画面設計に関しては発表する場ごとの特徴や、指導担当者の趣味に依存する部分も多いので、適宜調整する。

プレゼンテーション資料の時間設計

  • 多くの場合、発表は時間制限がある。やみくもに書き始めるのではなく、制限時間から資料枚数を逆算する技術が必須
    • スライド資料1枚につき所要時間1分と換算するのが標準とされる。
    • 特に重要なスライド、十分な説明を要するスライドは1分半~2分に換算
    • 逆に、目次などのさらっと流すだけで済むスライドは30秒程度に換算して良い
    • 表題スライド、末尾の挨拶(「ご清聴ありがとうございました」など)は発表時間0秒として換算して良い
    • 当然、動画を流したりデモンストレーションを要する部分は適宜内容に合わせて時間換算する。
  • 人によって、話すスピードやクセに特徴がある。発表経験を積む中でより的確にスライド枚数と発表時間を換算できるようになる。むしろ、発表練習を重ね、的確な時間換算ができるスキルを意識的に身につけるべし
    • 慣れてくると、「自分の発話速度」を「伝えるべきスライドの枚数」に合わせて調整できるようになる
      • ただし、あまりにも詰め込んだ発表は聴衆を置いてけぼりにするので本末転倒
筆者の場合、緊張すると話しすぎるクセがあるので、目次30秒、本文スライド平均1分半で換算して資料を作成する。やむなくこれをオーバーした場合は資料の圧縮を試み、なおもハミ出した分は発話速度で調整する。
  • 普通、発表の際には発表時間が終了する前に、予告ベルを鳴らしてくれる。(10分の発表ならば終了2分前や1分前に鳴る)
    • 予告がベル1回、予定時間終了がベル2回、質疑時間終了(あるいは強制打ち切り)がベル3回とするのが一般的。(俗に1ベル、2ベル、3ベルと言う)
    • 予定通りに話が進んだ時、1ベルがどのタイミングで鳴るのかを予想しておくと良い
    • 1ベルが鳴る予想タイミングと、実際に1ベルが鳴ったタイミングのズレから、発表の遅れ・進み具合が判断できる。
    • ストップウォッチや時計を眺めながら発表できる場合も、発表時間の真ん中~3分の2あたりにチェックポイントを決めておいて、確認すると良い。

プレゼンテーション資料の論理設計

  • 基本的な構成は論文の構成に準ずる。
    • ただし、予稿が聴衆に行きわたっている場合、詳細な参考文献は発表時にいちいち示さないことが多い
    • 要旨も一般的にはいちいち示さない。あるいは「はじめに」の中に組み込む。
  • 論文になくてプレゼンテーション資料にあるものは「目次」
    • 目次は、発表の予告編の役割
    • 目次を読み上げながら、論理展開のガイドラインを聴衆に示す。ただし、いちいち読みあげず、5秒程度見せるだけでさっさと次に進むスタンスの発表者もいる。
    • まれに目次を書かないというスタンスもある。
    • 目次の位置は表題スライドの直後が一般的。まれに、「はじめに」で概要を示してから目次へ進む場合もある。
  • 論文もプレゼンテーションもストーリーを意識せよ。論理的に進む解説とそれをスムーズかつ魅力的に伝えるストーリー、その語りを支えるスライド資料を用意する。
  • おわりの挨拶の後に、詳細な参考文献情報や予想される質問の解説スライド、制作したものの時間が足らずにあふれたスライドを入れておくと、質疑応答で便利

プレゼンテーション資料の画面設計(情報量編)

  • 基本的に、スライド1枚につきキーワードは1つ
  • 1枚のスライドに情報を詰め込むな!(特に文字で詰め込むのは最悪)
    • 発表時間との兼ね合いで、1枚のスライドに詰め込まざるを得ない時はこうする。
      1. 不要な脱線、説明を削る。参考文献に投げられる所を投げる、本編で説明せずに、質問されたら答えるに留める。
      2. 文献[1]では内容の抽象化、比喩(例え話)の活用、いわば「情報圧縮」を推奨しているが、慣れないと論理展開がわかりにくくなるばかりか、かえって誤謬*5を招くので、自信がなければやらない方が良い。
      3. ほどほどに詰めてみる(ただし、詰め過ぎると説明に時間がかかって結局は無意味)
      4. それでもだめなら、本質的に無理。言いたいことを削って次の機会にまわす。
  • わかりやすく、かつ話すべきポイントを外さないコツ
    • (Twitterユーザー向け)スライド1~2枚につき1ツイート(140文字)で要点を説明できるか意識する。
    • 発表全体を1ツイート(140文字)で説明できればベスト。2ちゃんねる用語でいうところの『今北産業(今来たから概要を3行で説明せよ)』に対応できる意識を。

プレゼンテーション資料の画面設計(デザイン編)

  • プレゼンテーション資料は視(聴)覚資料であることを忘れるな
    • 聴衆への訴求力は次のような力関係を持つ。
      文字 (< 数式) < 表 < グラフや図 < 動画 < デモンストレーション
      ただし、適切に作られている事が前提。
    • 訴求力の大きい表現手法に置き換えられるなら置き換えよ。
    • 文字だけのスライドをできるだけ作るな!(表題、目次、あいさつを除く)
    • スライドの隅にイメージカットがあるだけでも、聴衆の印象は大きく変わる。(クリップアート、フリーイラスト、フリー写真を活用)
    • ただし、気をつけないと何を言いたいスライドなのかわからなくなる。文字と画像のバランスは作成者や指導担当者の趣味によってまちまち。うまくバランスをとる。
異なる表現で同じ情報を示す 表現形式
DesignSample1.PNG 文字表現
DesignSample2.PNG 表表現
DesignSample3.PNG グラフ表現
アニメーション表現(左の図をクリックするとアニメーションが表示されます。)
  • スライドデザインにこだわれ!
    • 白地に黒文字のみのスライドは最悪。PowerPointに標準で付いているデザインサンプルでも良いから、見栄え良く作ろう。
    • 最近はプロジェクタの光量が増えたため、白っぽい背景は眩しすぎることがある。
    • 青の背景+白の文字はシンプルだけどモダン&クールで見やすい。
    • 簡単で良いから色彩学(カラーコーディネート)の資料に目を通しておくと良い。
    • 強調色を用意する場合は、背景色・本文文字色とのコントラストに留意。(コントラストが低いと、強調されない)
  • 文字を見やすく!
    • 本文文字の大きさは最低でも18ptを確保。できれば24pt以上が望ましい。(ただし発表会場の広さによる)
    • (特殊な効果を狙ったり、特定のデザインを指定された固有名詞を除き)フォントは全体で統一するのが基本
      • PowerPointでは標準でゴシック体に統一され、OpenOffice.org Impressでは標準で明朝体に統一される。
  • 文末にこだわる
    • 単語の途中で改行しないように気をつけると読みやすい。PowerPointの場合、Shift+Returnでソフトリターン(箇条書きの点をつけずに改行)可能なので、 キリの良い位置でソフトリターンすれば回避できる。
  • 配置にこだわる
    • PowerPointでいうところの「レイアウト」を活用し、タイトル・本文の位置関係がなるべく狂わないようにすると、聴衆の視線が泳がない。
    • 実際に画面を眺めながら、視線の動かし方に迷わない配置を考える。
    • スライド番号を必ず入れる。スライド資料を印刷して配布する場合は特に必要。質問の時に、「スライド何枚目のどこそこについて~」などと、的確に議論が進められる。
  • アニメーションを活用せよ
    • 本文を1行ずつ表示する、キーワードに赤丸を表示するなどのちょっとしたアニメーションがあると、注目すべきポイントが聴衆にすぐ伝わる。
    • 理想は指示棒のいらないスライド
    • アニメーションの乱発は逆効果なので適材適所を心がける。使うべきところでは躊躇なく使う。
      • 構造図、フローチャートなどで上手に、思い切ってアニメーションを使うと、紙ベースの資料では得られない「わかりやすさ」を演出できる。
    • アニメーションにこだわりだすといつまでたっても資料が完成しないので注意
      • 最低限の発表がこなせる状態まで資料を完成させてから、アニメーションの検討に手を出すのが賢明。
OpenOffice.org Impressはアニメーションがまだちょっと弱いのが難点。

研究と発表の心構え~発表は積極的態度で、研究は消極的態度で行え~

発表は積極的態度で

  • 発表は一種の戦い。
    • 発表は自らが世の中に有用と信じる研究成果を、全力で聴衆にぶつける場。
    • 全力でぶつかれば、聴衆は負けじと反論する。この議論(戦い)に勝たなくてはならない。
      • 研究発表はいわばRPGにおけるボス戦である。これに勝てば、世に認められた研究成果という大きな経験値を得ることができる。
      • 学生の場合、ゼミ発表は中ボス戦、卒論発表は大ボス戦。これに勝って大学から卒業証書を奪おう。
  • 発表の舞台に立ったら、あなたは(その研究に関しては)世界最高の専門家。
    • 発表の場で弱気になってはダメ。弱みを見せたらその瞬間に惨敗が近づく。
    • 発表の舞台に立ったら、その研究分野に関しては自分が世界で一番の研究者だという自信を持つこと。
  • 発表に慣れていない人にとって、一番苦しいのは質疑応答であろう。
    • 容易に答えられる質問、想定済みの質問の場合は、堂々と答える。
      • たまに、質疑応答になった途端におどおどする人がいて、これは恰好悪い。
    • 意図・意味のわからない質問があった場合は、「その質問は~~という事をお聞きになりたいのでしょうか?」と聞き返して大丈夫。
      • 中途半端な理解、見当違いな理解で食い違った返答を返すよりはよっぽどスマートでカッコいい。
      • 一度にたくさん質問されて覚えきれなかった場合も「他はどのような質問でしたでしょうか?」と聞き返して大丈夫。
    • 堂々とすることが重要だが、傲慢になってはだめ。「賢きとは己を知ること也」すぐに答えられない質問をされたり、想定外の不備を指摘された場合は、文脈に応じて以下のような返答を使い分ける*6
      • 「貴重なご意見ありがとうございます。その点に関しましては今後の検討課題とさせていただきます。」
      • 「ご指摘ありがとうございます。その点に関しましては今回の検討からは漏れておりましたので、今後研究を重ねる中で参考にさせていただきたいと思います。」
      • 「そちらの点に関しては、この場で回答を用意できませんので、よろしければ後日詳細な回答をさせていただきたいと思います。」(この場合は当然、休憩時間に名刺交換をするなどして挨拶すること。)

研究は消極的態度で

  • 発表を戦いとするならば、日々の研究(文献調査、実験、検討…)はRPGで言うところの日々の経験値稼ぎ。
    • 十分な量があり、かつ緻密に集められた実験データや、論理的にまとめられた考察は自分の主張を支える強力な武器。
    • 先行研究の論文や書籍の知識は、聴衆からの攻撃から身を守る防具。(自分の思いこみとか妄想ではなく、他の人も同じように考えているんだ、ということを主張できる。)
    • 時には村人の話を聞いたり(仲間とのディスカッション)、道具の購入(実験機材の準備)も必要。
  • 強気にならないこと。「俺はもうこれでボスに勝てるぞ!」という「自惚れが出た」瞬間に足をすくわれて惨敗。
    • すなわち、研究に「完全」はない。慢心せず、与えられた時間一杯まで調査、検討、実験を尽くすべき。
      • 検討し残したことはないか?補強すべきデータはないか?残された課題はないか?…
      • すべてを検討しつくした気分でいてもなお、想定外の穴があるのが現実。ならばすべてを検討しつくした気にもなっていないならば、議論はなおさら穴だらけ。マーフィーの法則にはこうある。「失敗する可能性のあるものは失敗する」

[応用]論理学は説得力ある議論に必須

論理的な展開とは、論理学上正しい展開(証明)と言って良いだろう。 筆者もきちんと論理学を学んだことはないので、ここではキーワードの解説を しておくに留めておく。

論理学の道具(論理式)

用語
命題
客観的に見て、誰もが正しい(真=True,T)か誤り(偽=False,F)かを判断できる主張。
論理学ではT,Fの二者択一で判断できる命題のみを扱う*7
論理式
論理学上の主張を数式のように表したもの
論理演算
論理式を構成する演算子
論理的に同値
真理値表の値が同じ、すなわち同一の条件ならば同一の出力を出す2つの命題がある場合、両者は論理的に同値といい、(⇔,=,≡)などと表す。
真理値表
入力の全ての状態をリストアップし、入力の状態に対する出力を一覧表として確かめるもの
行数は2の(条件命題の数)条となる。(変数1個→2行,変数2個→4行,変数3個→8行…)
論理演算(A,Bはそれぞれ別の命題とする)
ではない(否定,NOT,¬, ̄)
(Aではない)はAがTの時F、AがFの時Tを返す。
A ¬A
F T
F T
かつ(論理積,AND,∧,・)
(A かつ B)はAとBが共にTの時のみTを返し、その他ではFを返す。
A B A∧B
F F F
F T F
T F F
T T T
または(論理和,OR,∨,+)
(A または B)はAとBが共にFの時のみFを返し、その他ではTを返す。
一般的な意味の「または」とは異なるので注意(排他的論理和を参照)
A B A∨B
F F F
F T T
T F T
T T T
排他的論理和(イクスクルーシブ・オア,EX-OR(XORとも),∨_(本来は∨の下に線を書く),(+)(本来は○の中に+))
(A XOR B)は、AとBの「いずれか片方のみ」がTの時にTを返す。
一般的な意味での「または」はこちらの意味で使われることが多い。
(Ex.「サイドメニューはサラダかスープをお選びください」と言われた場合、「両方」は頼めない)
A B A XOR B
F F F
F T T
T F T
T T F
ならば(論理包含,→)
(AならばB)はAがFかつBがTの時のみFを返し、その他ではTを返す。
一般的な「ならば」とは意味が異なる場合があるので注意。
正式には(¬A∨B)と定義される。(下記真理値表の末尾2列がA⇒Bと同値であることで証明される)
A B A→B ¬A ¬A∨B
F F T T T
F T T T T
T F F F F
T T T F T

この「ならば」の定義は直感的に以下のように説明される。

命題「じゃんけんに負けた(=A) ならば お昼代をおごる(=B)」 について、明確に誤りと言えるのは「じゃんけんに負けたのにお昼はおごった」場合のみである。故に

A B A⇒B 状況
F F T 「じゃんけんに負けていない(A=F)のでお昼代はおごらない(B=F)」は論理的に正しい
F T T 「じゃんけんに負けていない(A=F)のにお昼はおごった(B=T)」は論理的に誤りとは言えない(正しいとみなす)
T F F 「じゃんけんに負けた(A=T)のにお昼代はおごらない(B=F)」は命題に明らかに反していて誤り
T T T 「じゃんけんに負けた(A=T)のでお昼代をおごった(B=T)」は論理的に正しい
論理的に正しいとは

与えられた条件において、論理式の出力が全てTならば(トートロジー、恒真)その命題は常に正しいと言える(恒真命題)。逆に論理式の出力が全てF(恒偽)ならその命題は常に誤りと言える(恒偽命題)。

例題(文献[8]より一部改変して引用)

(1)「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」が正しいならば、「詩人ならばアップルパイ好き」と言えるか?

条件命題は「論理的である(=A)」「詩人である(=B)」「アップルパイが好きである(=C)」の3つ。

「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」を真理値表にする。

A B C A∨B A∨C (A∨B)→(A∨C)
F F F F F T
F F T F T T
F T F T F F
F T T T T T
T F F T T T
T F T T T T
T T F T T T
T T T T T T

「詩人ならばアップルパイ好き」を真理値表にする。

A B C B→C
F F F T
F F T T
F T F F
F T T T
T F F T
T F T T
T T F F
T T T T

「「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」ならば「詩人ならばアップルパイ好き」」を真理値表にする。

A B C (A∨B)→(A∨C) B→C ((A∨B)→(A∨C))→(B→C)
F F F T T T
F F T T T T
F T F F F T
F T T T T T
T F F T T T
T F T T T T
T T F T F F
T T T T T T

真理値表の結果はトートロジーでないので、「「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」ならば「詩人ならばアップルパイ好き」」は誤り、すなわち

答.「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」が正しいとしても、「詩人ならばアップルパイ好き」とは言えない。
(2)「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」が正しいならば、「アップルパイ好きでない詩人ならば論理的」は正しいと言えるか?

前半部分の真理値表は(1)と同様なので割愛。

「アップルパイ好きでない詩人ならば論理的」を真理値表にする。

A B C ¬C ¬C∧B (¬C∧B)→A
F F F T F T
F F T F F T
F T F T T F
F T T F F T
T F F T F T
T F T F F T
T T F T T T
T T T F F T

「「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」ならば、「アップルパイ好きでない詩人ならば論理的」」を真理値表にする。

A B C (A∨B)→(A∨C) (¬C∧B)→A ((A∨B)→(A∨C))→((¬C∧B)→A)
F F F T T T
F F T T T T
F T F F F T
F T T T T T
T F F T T T
T F T T T T
T T F T T T
T T T T T T

真理値表の結果はトートロジーであるので、「「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」ならば、「アップルパイ好きでない詩人ならば論理的」」は常に正しい。従って

答.「「論理的であるか詩人であるならば論理的であるかアップルパイ好きである」ならば、「アップルパイ好きでない詩人ならば論理的」」は正しいと言える。

論理式を支配する法則

論理式を支配する放送を理解すると、真理値表からではなく数式から論理を解ける。 解を変えないように論理式を変形する(同値変形)ことは、複雑な命題をより 簡単な命題に置き換え可能であるということを意味する。

以下、A,B,Cをそれぞれ別の命題とする。

反射法則
¬(¬A) = A
結合法則
(A∧B)∧C = A∧(B∧C)
(A∨B)∨C = A∨(B∨C)
ベキ等法則
A∧A = A
A∨A = A
交換法則
A∧B = B∧A
A∨B = B∨A
分配法則
A∧(B∨C) = (A∧B)∨(A∧C)
A∨(B∧C) = (A∨B)∧(A∨C)
吸収法則
A∧(A∨B) = A
A∨(A∧B) = A
ド・モルガンの法則
¬(A∧B) = ¬A ∨ ¬B
¬(A∨B) = ¬A ∧ ¬B

以下、恒真命題をI、恒偽命題をOと書く

矛盾法則
¬A∧A = O
排中法則
¬A∨A = I

論理の逆・裏・対偶

以下、命題 A→B に対して

命題の逆
B→A
命題の裏
¬A→¬B
命題の対偶
¬B→¬A

ここで、以下の法則が成り立つ

対偶は真
A→B = ¬B→¬A

日々の思考でも、ついうっかり「逆」や「裏」を無条件に真と思いこんでしまうことがあるので注意が必要。

'''例:「夏ならば暑い」

  • 命題「夏ならば暑い」を真であるとする。
    • 「暑いならば夏」は命題の「逆」であり、これは真ではない(夏でなくても、暑いことはあるかもしれない)。
    • 「夏でないならば暑くない」は命題の「裏」であり、これも真ではない(夏でなくても暑いことはあるかもしれない)。
    • 「暑くないならば夏でない」は命題の「対偶」であり、これは真である(これが真でない場合、暑くない夏が存在することになり、あきらかに前提条件と矛盾している)。

必要条件・十分条件・必要十分条件

A→B が常に成り立つ、すなわち A→B = I であるとき、これを特に A⇒B と表す。

この時、

  • Aが成り立っているためにはBが成り立っている「必要がある」から「BはAの必要条件」と言う
  • Aが成り立っていれば、Bが成り立っている事は仮定から明らかであり、Bが成り立っている事を示すにはAが成り立っている事を示せば「十分である」から、「AはBの十分条件」と言う。

また、 A⇒B であり、その逆すなわち B⇒A も成り立っている場合は A⇔B と書き、AはBの、BはAの「必要十分条件」という。

三段論法

仮定を積み重ねて結論を得るには、三段論法を用いる。三段論法とは 『「AならばB」および「BならばC」ならば「AならばC」と言える』 (A→B)∧(B→C) = (A→C)

正しいと認められる仮定を、三段論法を重ねることで連結していけば、正しい結論が得られ、演繹法という。

演繹法は、正しくない仮定を用いて行うとまったく見当違いの結論を得てしまうので注意が必要。(典型例がことわざの「風が吹けば桶屋が儲かる」)

「全ての~」や「~となるような…が存在する」の扱い

数学では、たとえば「全ての実数xについて (x^2)>0 である」「f(x)=ax^2+bx+c という2次関数とするとき、必ずf'(x)=0となるような点xが存在する」といったような形式の命題を扱うことが良くある。

先ほどまでのように真理値表で解く考え方は「考えうる全ての状態を列挙」してその様子を調べることで証明が可能であったが、「全ての」「~となるような…が存在」という場合、考えられる状態は無限にあるので、全てを調べつくすことはできない。

ここで、「全ての」「~となるような…が存在」は数式的に次のように表記する

「条件p(x)を満たす全てのxについて」
∀xp(x)
「ある条件p(x)となるようなxが存在する」
∃xp(x)
∀と∃に関するド・モルガンの法則

∀・∃について、ド・モルガンの法則が成立する。

¬(∀xp(x)) = ∃x(¬p(x))
「全てのxについてp(x)である」の否定は「p(x)とならないようなxが存在する」
¬(∃xp(x)) = ∀x(¬p(x))
「p(x)となるようなxが存在する」の否定は「全てのxについてp(x)ではない」
∀や∃を含む命題をどのように証明するか(背理法、数学的帰納法)

考えられる可能性が無限にある場合、全てを調べることはできない。そのような時にはどのような証明を行えば良いのか。

数学的に有名な手法として、「背理法」「数学的帰納法」がある。

背理法
命題を直接証明するのではなく、命題の否定を証明する。
例:「(全てのリンゴは黒色)ではない」は正しいか?

全てのリンゴを調べることはできないので、背理法を用いる。与えられた命題の否定とは ド・モルガンの法則を用いて「黒色でないリンゴが存在する」となる。

八百屋にいって、リンゴを1つ買ってきて、それが黒色でない場合、「黒色でないリンゴが存在する」が真となり、これによって「全てのリンゴは黒色ではない」が真であるといえる。

数学的帰納法
ある数列に対する命題がある時、その1番目の値について命題を証明し、次にn番目の値について命題が証明されたと仮定してn+1番目の値について命題を証明する。
例:「全ての自然数は0より大きい」は正しいか?

最も小さい自然数(これを1番目の自然数とする)は1であり、明らかに0より大きい。 n番目の自然数(すなわちn)まで命題が証明されたと仮定すると、n+1番目の自然数はnに1を足したものであり、nが0より大きいなら明らかにn+1も1より大きい。

故に、証明済みのn=1を仮定すればn+1=2にも命題は成り立ち、n=2を代入すれば…と、全ての自然数に対して命題は正しいと言える。

証明ではないけれど…

本当の真理を論理学的に証明することは難しい場合に用いられるのは「全てを調べるのではなく、いくつかの例を調べた結果から全体を類推する」方法である。論理的には、いくらサンプル数を増やしたところで、完全な証明とは言えず、単なる類推に過ぎない。

その類推をいかに上手くやるか、あるいはその類推がどの程度信頼できるものなのかを議論する道具が統計学である。

[応用]論理を的確に伝えるコトバ

  • 文は短く簡潔に
    • 英語の文型はSVO(主語-述語-目的語)であるが、日本語はSOV(主語-目的語-述語)なので、文末にならないと文の意味が確定しない。従って、長い文は結論と主体(主語)が離れて、意味がわかりにくくなる。
  • 文に余計な情報を入れない。
    • 読みにくい文章の多くは、大して重要でもない付加情報を1つの文章にたくさん混ぜ込んでいる。
    • 真に必要な付加情報なら、むしろ別の文章に分けて示す。

読みにくい文章の例(Webページの話と研究の話が混ざっている)

N.Y.City氏は多彩なジャンルにわたる情報、例えばコンピュータとか写真などといったジャンルの話を「N.Y.Cityのまちかど」というWebページで公開している大学院の修士1年で、コンピュータを利用して音楽を科学する学問である音楽情報科学、特に音楽理論を計算機が理解できる形で記述しなおそうとする計算機音楽理論という分野でジャズ理論の実装に関する研究をしている人である。

改善例1(研究とWebページの話を分割するだけでもかなりすっきりする)

N.Y.City氏は大学院の修士1年で、コンピュータを利用して音楽を科学する学問である音楽情報科学、特に音楽理論を計算機が理解できる形で記述しなおそうとする計算機音楽理論という分野で、ジャズ理論の実装に関する研究をしている人である。また、多彩なジャンルにわたる情報、例えばコンピュータとか写真などといったジャンルの話を「N.Y.Cityのまちかど」というWebページで公開している。

改善例2(さらに、音楽情報科学や計算機音楽理論といった言葉の説明を分離、主語の補充)

N.Y.City氏は大学院の修士1年で、音楽情報科学、特に計算機音楽理論という分野で、ジャズ理論の実装に関する研究をしている人である。音楽情報科学とはコンピュータを利用して音楽を科学する学問であり、計算機音楽理論は音楽理論を計算機が理解できる形で記述しなおそうとする分野である。また、N.Y.City氏は多彩なジャンルにわたる情報、例えばコンピュータとか写真などといったジャンルの話を「N.Y.Cityのまちかど」というWebページで公開している。

接続詞に気をつけろ

  • だらだらと長く続く文を簡潔な文に区切り直したとき、それら複数の文章の間に横たわる関係性をしっかり明示しないと何が言いたいのかわからなくなる。
  • 文章の関係性を明示するのに重要なのが接続詞である。
  • 個々の文章が示す内容が正しくても、接続詞を誤ると全く意味が違って伝わる!
接続詞の分類と例

各語の解説には、個人的な意見が多分に含まれており、国語学的に正しい解説とは限らないので注意して下さい。

順接
前の文脈から自然に導かれる結論を次の文章で示す。
  • だから(やや口語的)
    • 冬は寒い。だから冬はおでんが売れる。
  • そこで(提案の意味合いが強い)
    • 未知の音楽から自分好みの曲を探すことは難しい。そこで本研究では好みの色の情報を利用した音楽検索の手法を提案する。
  • すると(自然に導かれる結論ではあるが、やや意外な結論が得られる時に用いられることが多い)
    • アキレスは亀に少し追いつくが、その間に亀は少し離れ、またアキレスが追いつくと亀は少し離れ…これを繰り返す。するとアキレスは永久に亀に追いつけないことになってしまう。
  • したがって
    • ある正の値xも、符号を反転した-xも二乗するとともに同じ値yになる。したがってyの平方根はxと-xの二つが存在すると言える。
  • よって
    • 実験の結果、測定値は予測値とほぼ一致した。よって実験に先立って考えた仮定は正しかったと言える。
逆接
前の文脈と相反する話を次の文章で示す。
  • けれど、けれども(口語的)
    • ミカンはふつう甘い。けれども僕の食べたのは強烈に酸っぱかった。
  • しかし
    • 音楽は音が時間軸上、周波数軸上に重なりあったものである。しかし、そのような音がすべて音楽として知覚されるかと言われるとそうではない。
  • だが、が
    • 酒を飲むことは楽しい。だが酔いつぶれて苦しい思いをしてまで飲もうとは思わない。
  • ところが(意外な結論が続く場合)
    • 電話をかけようと携帯電話を取り出した。ところが電池が切れていて動かなかった。
  • でも
    • 春は気温が暖かくて、きれいな花がたくさん見れる大好きな季節。でも花粉症は辛くて困る。
並列
前の文章と対等の関係にあることを次の文章で示す。
  • および
    • マンガおよびアニメは、現代を代表する日本のサブカルチャーとして認識されている。
  • また
    • 適切な声の大きさは、周辺の環境に応じて変化する。また、話し手と聞き手の距離によっても変化する。
  • ならびに(かなり固い言い方)
    • 新婦ならびに新郎の幸せを、心より願っております。
添加
前の文章に別の情報を付け加える。
  • そして
    • 冬が過ぎ去り、そして春がやってきた。
  • しかも
    • 今日から転校生が来ると言う。しかも一人ではなく二人だ。
  • それに
    • 上手く泳げないし、それに日焼けしたくないから海には行きたくない。
  • さらに
    • あの商品が今日は定価の2割引きで販売、しかもおまけまで付いてくる。
  • また
    • 東京は一日中雨、また一部地域では雷を伴うでしょう。
説明
前の文脈を言い換える。または、例示する。
  • つまり
    • 正弦関数、つまりsin関数は、三角関数の一種である。
  • なぜなら
    • 猛烈に眠い。なぜなら夕べ寝るのが遅くなってしまったからである。
  • 例えば
    • 基礎科目はあらゆる講義の前提となる内容だから、きちんと学んでほしい。例えば数学はその好例である。
  • すなわち
    • 高齢化社会、すなわち総人口に占めるおおむね65歳以上の老年人口が増大した社会では、年金の制度がうまく機能しない。
  • ただし
    • 私はいつも朝10時頃起きる。ただし1限目から実験がある日はその限りではない。
選択
複数の候補を示し、それらのうちどれかを選ぶ。
  • または
    • バスに乗る際はICカード、または小銭をご用意ください。
  • それとも
    • ごはんにしますか、それとも先にお風呂に入りますか?
  • あるいは
    • 駐車場の用意がありませんので、会場への移動は徒歩あるいは公共交通機関をご利用ください。
  • もしくは
    • 明日にでも、電話もしくはFAXでご連絡差し上げます。
転換
前の文脈と関係ない、別な話題を次の文章から示す。
  • さて
    • 寒さも和らぎ、春が近づいてきました。いかがお過ごしでしょうか。さてこの度、私たちは新居に引っ越しましたのでお知らせします。
  • ところで
    • 今日の授業はここまで。ところで、来週は祝日だから授業は休講です。間違えて授業に来ないように気をつけて下さい。
  • では
    • 試験終了、ペンを置いて下さい。ではこれから回答用紙を回収します。
  • それでは
    • 新郎のご友人からご挨拶をいただきました。それでは続きまして、新婦のご友人からもご挨拶を頂きます。
  • ときに(口語的、しかもちょっと古い?)
    • なるほど、釣りが趣味なんだね。ときに君は、酒は飲めるのかい?

参考文献

示している年は初版発行年です。

[1]プレゼンテーションに悩むすべての人達のために:プレゼンテーションの世界標準「構造的プレゼンテーション」
http://d.hatena.ne.jp/kzhk/20091215/p2
プレゼンテーションや論文を執筆する人に向けたノウハウの、そのまたエッセンスが
詰まった良記事。
[2]平林純「理系のためのプレゼンのアイディア」(技術評論社,2006)
http://gihyo.jp/book/2006/4-7741-2902-X
やや凝り過ぎな感はあるものの、視覚と感性に訴求するプレゼン資料作成の
ノウハウが詰まっている。オリジナリティにあふれるアイディアが多いので
一見の価値あり。
[3]鹿島茂「勝つための論文の書き方」(文芸春秋,2003)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166602957
[4]小笠原 喜康「大学生のためのレポート・論文術」(講談社,2002)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1496034
新版が出ているようです。(http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2880210)
[5]原田 豊太郎「理系のための英語論文執筆ガイド―ネイティブとの発想のズレはどこか?」(講談社,2002)
文献[1]でも触れられているが、構造的な発表技術は英語圏では必須。
英語論文の執筆ガイドは、わかりやすい日本語論文を書く上でも大変参考になる。
特に、日本語論文の執筆ガイドはなぜか文系学生を主たる対象にしたものが多いので
理工系にはむしろこちらの方が役立つと言っても良いように思う。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2573644
[6]松森 靖夫「論破できるか!子どもの珍説・奇説」(講談社,2002)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2573628
答えは間違っているかもしれない。しかし眼前の事実からひたむきに仮説を立てて
どうにかして自分の考えの正当性を主張しようとするスタンスは論文を書く
あらゆる人が見習うべきと思う。
[7]野崎 昭弘「詭弁論理学」(中央公論新社,1975)
http://www.chuko.co.jp/shinsho/1976/10/100448.html
論理クイズを中心に、論理学の考え方をわかりやすく解説しています。
[8]小野田博一「新作論理パズル77」(講談社,1995)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2570610
小野田さんはパズルに関する書籍を多数出していて、とてもおもしろいです。
[9]中内伸光「ろんりと集合」(日本評論社,2009)
http://www.nippyo.co.jp/book/5139.html
論理学と集合論について大変読みやすくわかりやすくまとめられた本。
[10]吉岡 友治「だまされない〈議論力〉」(講談社,2006)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=149855X
数値データのトリックを中心に、データの読み誤りを誘うような情報から
正しい情報を得る方法をまとめています。読み解く際に注意すれば与えられたデータ
から正しい情報を得られますし、逆に資料を作る際に応用すれば
注目してほしいデータを強調する技術になります。
(ただし度が過ぎるとデータのねつ造になるのでご注意を。)
[11]竹内 薫「99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」(光文社,2006)
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334033415
大変ヒットした本なので知っている人も多いと思いますが、読者の目を引かせる
ための配慮なのか、本文に示されているエピソードが、誇張されすぎのように
思います。個人的にはちょっと眉に唾をつけながら読むべきかと思います。
[12]ルイス・キャロル (著), 柳瀬 尚紀(訳)「不思議の国の論理学」(筑摩書房,2005)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480089236/
不思議の国のアリスで有名なルイス・キャロルの本業は、数学者です。
かなり難解で、でも読みもとのしても素敵な論理パズルが満載の本です。
[13]SIGMUS@関学 1日目
http://d.hatena.ne.jp/keiko-te/20100215/p1
私の所属するSIGMUSの様子を書いたブログ記事です。
この中に「国際会議に通る論文・通らなかった論文についてのトーク」があり、
大変参考になる内容です。
[14]知的な技術文章の書き方(1)(2)
電気学会誌 2006年126巻10号、11号に連載
たまたま目にした電気学会誌に掲載されていた解説記事。
特に(2)に掲載されている作図力学という概念は目からウロコでした。
[15]悪文と良文から学ぶロジカル・ライティング
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090520/330361/?ST=slfper
読みやすい文章を書くコツがポイントごとにまとめて連載されています。
[16]科学技術論文の書き方
http://www.okada-lab.org/Ronbun/
大変中身の濃い、論文の書き方指南。
[17]卒論心得
http://blog.tatsuru.com/2010/10/01_1523.php
『寝ながら学べる構造主義』など、大変面白い本を多数執筆されている内田樹先生が、自身の研究室に所属する学生に向けて書いたブログ記事。
「レポート」と「卒業論文」の違いを、わかりやすく示しています。
[18]コピペはダメだよ、について
http://blog.tatsuru.com/2011/01/09_1554.php
前掲の内田樹先生のブログより.『出典についてはきちんと書誌情報を明記し、「贈り物をありがとう」と記載せよと私がうるさく言うのは、そのような気遣いをしたものは必ず読者への「贈り物」になるようなものを書こうと願うからである。』
[19]サラリーマン研究員日記 論文の書き方講座
http://hoahoa.seesaa.net/article/185130870.html
「何のために論文を書くのですか?」という質問に対する回答が「モテたいから」という,なかなか興味深い指摘です.
広くその学問分野に携わる人々に自分の研究を知ってもらい,自分を気に入ってもらう.
そのために論文を書くのであり,これを忘れたら論文の質を高める努力はされなくなる…
シンプルですが奥の深い考え方だと思います.

*1ついしょうじっけん:与えられた結果が本当に正しいかどうか確かめる実験。よく使われる用語だが、驚いたことに国語辞書には載っていない、一種の業界用語

*2一般に論文は、そこで主張する内容が何らかの形で社会貢献されることを期待される。どれだけ社会貢献できるかが論文の価値・評価に直結する。

*3ただし、あまりにも初歩的な間違いである場合は間違ったことを書いた参照先の責任でなく、その間違いを見つけられなかった引用者の責任を問われるので注意。

*4Over Head Projector,プラスチック製の透明フィルムに文字や図を書き、下から強い光を当ててレンズと鏡を通じてスクリーンに投射する装置

*5ごびゅう:論理的、形式的に明らかな誤りを含むこと

*6これもあまりに初歩的な質問や指摘でやると恥さらしもいいところなので注意

*7ファジィ論理学のように、単純な二者択一ではなくその中間値まで扱う体系もある


現在ご覧のページの最終更新日時は2015/03/15 00:49:43です。

Copyright (C) N.Y.City ALL Rights Reserved.

Email: info[at]nycity.main.jp