N.Y.Cityのまちかど

FS3X_FootSW

Digitech JamMan Stereo 用フットスイッチを作る

はじめに

Digitech社のJamMan Stereoというルーパー/フレーズサンプラー*1を使用している友人が、「専用フットスイッチ(FS-3X)が欲しいけど高い」と言っていました。調べてみたら定価で税抜¥7,500と、確かに高め。

調べてみると、中身は全然大した回路ではなく、「なんだ、これなら作れるじゃないか」ということで、久しぶりに趣味の電子工作をしてみました。

回路図と設計

回路図

回路図が理解できる人ならばわかると思いますが、大変単純な回路です。

TRSジャックというのは、いわゆる標準プラグとかフォーンプラグと呼ばれるもの(を受けるジャック)のステレオ版ですね。(プラグが3つにわかれていて、先端からTip、Ring、Sleeveと呼ばれることから、頭文字をとってTRSという)

3つのプッシュスイッチが接続されています。(スイッチであれば何でも動作しますが、演奏中に使用するという趣旨上、足踏みに耐えるスイッチを選定します。また、プッシュスイッチにはオルタネート(押すたびにON-OFFが切り替わり、離すと状態を保持)とモーメンタリ(押すとONまたはOFF、離すと自動復帰)がありますが、モーメンタリスイッチを使用します。

整流ダイオードが2つ接続されているので、RingとTipに常時電圧が供給されていて、

  • Recordが押されるとTipのみ電位がGNDになる
  • Upが押されるとRingのみ電位がGNDになる
  • Downが押されるとTipおよびRingの電位がGNDになる

と区別して動作しているであろうことがわかります。(ダイオードがないと、片方をGNDに落とした時自動的に反対側もGNDになってしまって区別できない)

なお回路図はこのサイトに掲載するにあたって清書しました。実際に作るときは、メモ紙に適当にメモしただけです。

設計方針

大きい方が作業はしやすいんですが、場所をとってしまうので、「できるだけコンパクトに軽く」と考えました。

足で踏めるスイッチというのはそれほど選択肢がないので、迷わずフジソクのムスタングプッシュスイッチ(モーメンタリ3P)を選択。

この手の工作ではアルミケースに回路を収めるのが定番ですが、設計方針に従って、樹脂ケースに収めることにしました。お店で選んだ結果、タカチ電機工業のTW7-5-13Bを選択。

ユニバーサル基盤に組むほどの回路ではないので、回路はラグ板に実装することとし、ラグ板は両面テープ付の樹脂製の台にねじ止めして固定することとしました。

部品はすべて秋葉原の千石電商で調達。

製作

ケース加工~スイッチ・ジャックのとりつけ

ボタンの配置は、現物を見ながら考えました。スイッチやTRSジャックのデータシートを見ると、ケース加工時にどのような穴を開ければいいか書いてあるので、それを参考にしながら1mm方眼紙に実寸大で穴開け位置を書き、セロテープで軽く貼ってケガキの代わりとしました。

実は、この配置はすんなり決まったわけではなく、最初は下写真のように横並びの均等配置にしたのですが、こうすると足で操作するときに踏み分けできないなと思い、ケースを買い直してリトライしているのです。

ホームセンターで、小型のドライバードリルおよびビットキットを購入し、これで穴あけをします。

3mm穴(スイッチのロックリングが入る穴)は3mmのドリルで、それ以外の大きな穴は、3mmのドリルで下穴を開けた上に、さらに5mmのドリルで穴を広げます。刃が食いつくと摩擦で温度が上がる上、無理な力がかかってケースが割れてしまう可能性もあるので、連続して切削しないよう間欠的にドリルを動かして、ゆっくり穴を開けます。

スイッチを入れる穴は12.5mm、TRSジャックを入れる穴は10mmなので、このドリルでは穴が小さすぎます。テーパリーマを使用して穴を広げます。

テーパリーマを下穴に差し込み、垂直を保ちながら時計回りにねじって、穴の内側をえぐり、広げていきます。樹脂なので力はいりません。削りすぎはコワイので、ある程度広げたら寸法を慎重に確認しながら作業します。ノギスで内寸を測り、さらに現物を差し込んでみて具合を見ます。

削るとバリが裏側に出るので、最後の仕上げに、テーパリーマを「裏から」差し込んで、ほんの半回転くらいすると、バリをきれいに取ることができます。細かいバリが残ったり、内側がきれいにならない時はやすりで整えます。

無事に全て穴が開きました。

穴が開けば、スイッチとジャックが無事に組みつけられるかどうか確認…というところで、スイッチが一つ入らないというトラブルが発生。良く見ると、ケースの内側に立てられているボスがスイッチのワッシャと干渉して入らないことが判明。このボスがあるので、スイッチの向きをここだけ逆にしてロックリング穴がかからないように気を付けていたのですが、ワッシャ自体が干渉することを考えていなかった。図面検討しないで現物合わせで作るとこういうのが怖いですね。

仕方がないので、邪魔なボスを取り除きます。手持ちのニッパはケースが狭くて届かず。本当は「喰切(くいきり)ニッパ」があれば簡単なのですが持っていないので、ドリルでボスを削り取る作戦に変更。ところがうっかり削りすぎてしまって、表面に穴が開いてしまいました…。どうにか小さな穴で済んだので、これはあきらめて作業を続行することにしました。

ケース内側をフラットにしてワッシャと干渉しないようにするため、最後はサインペンの先に紙やすりをテープで留めた治具を作って軽くヤスります。

無事に、スイッチとジャックが取り付けられました。

配線

ここまでくれば、後は慣れた作業が多いので気が楽です。先述の通り、スイッチは一つだけ上下をひっくり返して配置しているため、配線を間違えないように、はんだ付け予定の端子にマジックで印をつけてしまいます。写真ではわかりにくいかもしれませんが、端子に赤マジックで色をつけています。

ジャックも、どれがどの端子かわかりにくいので、念のためテスタで確認したあと、マジックで印をしておきます。

ラグ板を樹脂製の台にねじ止めします。千石電商で見つけた、タカチ製の台を使いましたが、これ、どうもねじ山が切られていないような…。仕方がないので、ドライバーで少し力をかけながらねじ込んで、切り込みながら留めました。*25mmの樹脂スペーサを挟んで浮かせて取り付けています。これをセロテープでケースに仮止めします。

紙に配線図を書いてあらかじめ配線を検討してあったので、それに沿ってはんだ付けします。半田ごては高校の実習で使用していたもの。何年振りかに通電しました。

配線し終わったものがこれ。一部ビニールテープが貼ってあるのは、なるべく上でぶつからないようにフラットに配線していたら、逆に下で短絡してしまいそうだったので、絶縁用のビニールテープを下に貼って保護したため。

ラグ板に部品がついたら、スイッチ・ジャックとの配線をします。奥に写っているのは、昔百円ショップで購入した、半自動タイプのワイヤストリッパ。さすがに切れ味が多少悪くて作りも雑ですが、趣味の工作には十分使えます。

はんだ付けが終わったらケースを閉じてみて、ラグ板の位置が問題ないことを確認した後、仮止めを外して両面テープで固定します。

テスト

最後に、ジャックにケーブルを挿して、想定通りに動いているかどうか確認します。(ルーパー現物を持っていないので、テスタで導通を確認しただけ)

ちなみに、一番左がRecord、少し離れて中央下がDown、左上がUpのスイッチ。

ちゃんと使えるかどうか、実はまだわかりません。これから試してもらいます。

*1マイクやライン入力から入力した音を一定区間録音し、それを繰り返し再生しながら多重録音していく装置

*2商品名「ペテット」という別メーカーのものだと最初からねじ山が切られているのですが…。(ペテットも千石電商で売っていたが、安かったのでタカチ製にしたのが失敗だった)


現在ご覧のページの最終更新日時は2015/03/15 00:42:13です。

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