N.Y.Cityのまちかど

expression egulation with an allegory

或る寓話と表現規制

ある日の夜、唐突に思いついた寓話(のようなもの)がある。

ある国の議会で、こんな法律が提案されました。
「安全で住みやすい世界を作るため、殺人に使われた道具は全て使用禁止にして
この世から駆逐しよう。」
殺人のない、安心な世界を夢見た議員はこの法律を可決しました。

ある日、拳銃で人が撃たれる事件がありました。
警察は早速、全ての拳銃を集めてバラバラに壊しました。

またある日、スタンガンを当てられた人が心臓マヒで死んでしまいました。
警察は早速、スタンガンを集めて捨てました。

またある日、コンクリートブロックで殴られた人が死にました。
コンクリートブロックは全て集められて粉々に砕かれました。

ある日、ナイフで刺されて亡くなった人が出ました。
この世のナイフや包丁は全て集められて溶鉱炉に入れられました。

またある日、紐で首を絞められた人がいました。
紐は全て切り刻んで埋められました。

ある日、一般市民が人を殴り殺す事件がありました。
警察は一般市民を全て殺して亡きものにしました。

警察は一般市民を殺しました。だから警察は警察官を全て殺しました。

こうして、殺人の心配がない平和な世界が訪れました。

ばかばかしく、滑稽に見える話だが、昨今東京都や大阪府で取り上げられている表現規制問題に置き換えるとこうなる。

今、東京都や大阪府が行おうとしていることは、ばかばかしく滑稽なこの寓話への第一歩ではあるまいか?

ある国の議会で、こんな法律が提案されました。
「子どもが健全に育つ世界を作るため、子どもに悪影響を及ぼしそうな作品は
全て隠ぺいしてこの世から駆逐しよう。」
子どもが健やかに育つ世界を夢見た議員はこの法律を可決しました。

ある日、子どもを連れ去ろうとした人が、ロリコンマンガを愛読していたことが
わかりました。警察は早速、ロリコンマンガを一斉摘発して処分しました。

またある日、強姦事件を起こそうとした青年が過激な露出を含んだ成人向け雑誌を
所持していたことがわかりました。警察は早速、青少年の健全な成長を阻害する
として、同様の成人向け雑誌を全て処分しました。

またある日、殺人事件を起こした人が、過激なグロテスク表現を含む同人誌を
収集していたことがわかりました。警察は同人誌を全て回収し、処分しました。

ある日、暴行事件を起こした人が、乱暴表現を含む任侠小説を読んでいたことが
わかりました。警察は乱暴表現を含む小説を一切処分しました。

またある日、窃盗をした人が、ミステリー小説を愛読していたことがわかりました。
警察はミステリー小説を一切処分しました。

ある日、ひったくりをした人が毎日、新聞とテレビを見ていたことがわかりました。
警察は新聞を禁止し、テレビ局を全て解散させました。

警察は表現と報道の自由を奪っていると告発されました。
警察は犯罪者集団となり、そんな人たちが街にいることは青少年の健全育成に
ふさわしくないとして解散させられました。

こうして、取り締まる人がいなくなった今、何が「していいこと」で
何が「してはいけないこと」なのかがわからなくなり、
人々は表現はおろか、外を出歩くことすらままならなくなりました。
その結果、青少年が「健全育成を阻害するもの」を見ることのない、
理想的な世界が生まれました。

現在ご覧のページの最終更新日時は2015/03/15 01:05:53です。

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