「それぞれの細かな設定資料1」の補助資料
U.C3021年度、福祉作業用生体アンドロイド(実用化第1号 名称:美絵)における「理想関数」の働き
報告者:擬似人格OS開発局所属 高村 美奈子
1,理想関数とは
理想関数とは、現在一般化されている人工知能の動作に用いられる命令形態で、
一昔前の人工知能に比べると構造の簡略化が行われており、その中で使用されている関数も簡略化されているが、通常人工知能の汎用性に併せて関数はより複雑で、より多く必要となるのは避けられない。
そこで、極少数の関数だけで、汎用性ある命令を理想的に処理するために考え出されたのが「理想関数」である。
この理想関数の使用によって、通常複数必要であった関数命令を大幅に削減する事が出来、なおかつプログラムの
総量も1/6までに短縮、簡略化が出来、処理アルゴリズムの改変が非常に楽になった事で開発費用の削減など
が可能になった。
2,未来事象予測と理想関数
理想関数の開発により、人工知能の処理に余裕が出来たため、その余裕部分を使って始めて実用化出来たのが
「未来事象予測」である。
この未来事象予測とは、現在の状態を「現在事象」と言う形で定義して、定義できた事象から「未来事象式」を
導き出し、それをライラニィー提唱のS2行列マトリクス理論に当てはめて、
その解によって求められた値を使用し、その値と事象テーブル上のアドレスと照合、
過去に体験した幾つかの近似事象から似た物を理想関数として処理を行う。
この事は人間が一般的に行っている「予測行為」と同じ事であり、
人工知能上で人間が行っている複雑なこの予測行為を、簡単なプログラムで実行するために必要な
アルゴリズムの一つである。
3,未来事象予測のフレーム問題と、アシモフプログラム
だが、未来事象予測には決定的な欠点がある。
それが、「フレーム問題」と「アシモフプログラム」である。
フレーム問題とは、人工知能の発展、研究が進むにつれて度々問題となるもので、
問題自体の定義は、全てアシモフプログラムによって定義される。
この問題を簡略的に言うと、「人間に危害を加えられないロボット(アンドロイド)は動けない」というもので、
この事は未来事象予測と深く関わっている。
そもそも未来事象予測とは、上記で説明した通り、「現在の事象を過去に体験した近似事象と照らし合わせ、
その時どのような行動を取れば理想的かを予測し、その予測の範囲以内で最も理想的だと判断された命令を
理想関数として処理、実行する」と言う物であるが、そもそもその処理の過程で行われている「予測」と言う
行為が問題なのである。
通常、人間がこの予測行為を行うには、「現在の自分の状態と、これから行おうとしている事の手順についてと、
その行為を行った場合の周りへの影響」の3つを全て考えなければならない。
だが、人工知能でこのような処理を行うと、上記で上げられて3つの処理以外に「自分の行動が影響しない全てを
計算する」と言う無駄な行為を行わなければならない。
しかしその様な計算を行っても、何かしらの行動上では、必ず何らかの形で影響が出て来るので、
その影響について予測(正式には「分枝予測」)を行っても、新たに予測された行動には、
その行動を行う事によって生じる「影響しない全て」が出て来るので、結果として予測の繰り返しとなり、
何も行動できなくなってしまう。 (この事を「アシモフ現象」と言う)
そのため、現在実用化されている人工知能には、この予測について「最大24回まで予測内容の定義、再定義を
する事が出来る」と言う「分枝予測内容の定義、再定義に関する制限プログラム(アンチアシモフプログラム)」を
内蔵している。
追加レポート:生体アンドロイドについて (報告者:生体アンドロイド開発局所属 局長補佐 香川 永治)
1,生体アンドロイドの定義
生体アンドロイドとは、身体を構成している部品の内、実に99%を生体部品(注1)で作られているアンドロイドの事を示す名称で、外見は我々人間とまったく同じであり、一昔前に見られたアンドロイドに対する無機質的な
イメージを有機質的に一変させた、画期的なアンドロイドの事である。
なお、SIHA(注2)(シィハ SyntesIs HumAn=合成人間の事)とは別の物である。
2,生体アンドロイドが実現されるまで
生体アンドロイドの研究は、U.C2740年、アメリカのNASAが本格的に研究に乗り出したのを切欠に、
全世界で研究が開始され、文献によるとU.C2761年にプロトタイプが完成、ロールアップしたという
記録があるが、100%完全な物ではなく、ロールアップ後に暴走したため、破壊処分されてしまっている。
原因は、中枢神経部分のエラーではないかとされているが、当時の研究資料が残っていない(事件後、外部に情報が漏れることを警戒した関係者によって焼却処分されてしまった)ため、今となっては研究が出来ないのが事実である。
この事件は、一見さほど影響しないものと思われていたが、NASAでは真剣に捕らえており、
今後この様な事態の発生を避けるため、問題となった中枢神経系統をNASAが開発した製品をOEM(注3)の
形で各社に提供し、オリジナルの発生を禁止してしまったため、発展が著しく停滞、ついには開発を断念し、
開発をサイボーグや機械アンドロイドへシフト(注4)する会社も続出したため、U.C2770年以降、
U.C2910年までの140年間は、生体アンドロイドについての研究開発はまったく行われなくなってしまった。
その後、U.C2900年代に突入すると、NASAの規制緩和の影響もあり、再び各社で生体アンドロイドの
研究開発が開始され、U.C2913年に2体目の完全な生体アンドロイドが完成し、これをアーキタイプ(注5)
として以後研究が盛んに行われたが、15年戦争(注6)が勃発すると、それまで福祉作業などの平和的利用分野
から兵器分野へとシフトが行われ、生体兵器(注7)として開発が行われるようになった。
3,我が社(三菱重工 社会福祉部門 イタリア支局)の動向
各社が生体兵器として生体アンドロイドを開発している中で、我が社だけは、元々の利用方法である福祉関係用の
生体アンドロイドの開発を独自に行い、U.C2990年に我が社初のアーキタイプが完成するに至った。
このアーキタイプには、U.C2984年に改定されたS行列マトリクス理論(注8)の最新版に当たる
S2行列マトリクス理論が搭載されており、さらに事象(注9)を予測するためのアルゴリズムである未来事象予測
を全世界で始めて搭載する事に成功し、ここに完全な生体アンドロイドが完成したのである。
なお、このアーキタイプの名称は、「美絵」と呼ばれており、これは局長の亡きご息女の名前であるので、
このシリーズの商品名ではない。
注釈解説
注1 実に99%を生体部品:脳(電子脳)以外の、移植用の各種人工臓器が占める割合の事。
彼女の場合、人間の脳に当たる部分が容量32EBのEPROM(電気的に書き換え 可能なROM)と、2つのCPU+αで構成されているためである。
注2 SIHA:生体アンドロイドが登場するまでの間、使われていた人造人間の一種で、炭素ベースの人間に近い
タイプから、珪素(けいそ)や液体金属ベースのタイプまで、様々なタイプが存在していたが、
現在はまったく生産されていない。
注3 OEM:Original Equipment Manufacturingの略。
相手先の商標を付けて、部品や完成品を提供する事を言い、ごく一般的な方法である。
注4 サイボーグや機械アンドロイドへシフト:生体部品を多く使う生体アンドロイドは製造コストが大幅にかかり、
しかも今回のような事態となった場合、OEMでは完全に対処
できなかったメーカーが、製造が簡易なサイボーグへと開発を
変更した事。
注5 アーキタイプ:簡潔意言うと原型の事。
U.C2761年のような物の場合は、完成後に破壊されたため、アーキタイプとは呼ばない。
注6 15年戦争:U.C2988年、1月05日に勃発した世界大戦の事。
開戦から15年目のU.C3003年、1月01日に終戦したので、こう呼ばれている。
注7 生体兵器:遺伝子工学によって生み出された有機兵器の俗称で、今回のような場合もこれに分類する。
注8 S行列マトリクス:本来は、ハイゼンベルク提唱のものを示すが、ここではハイゼンベルク提唱を元に
新たに作られた物を示す。
今回のS2行列の提唱者は、グワーグル ライラニーと言うドイツの物理学者で、
「想像した未来を現実事象に持ってくる(転化する)理論」という形で定義されている。
注9 事象:出来事や物事など、ある一定の確率で起こる現象の事。
*製作、著作:高速なレッドマウス(別名 空の通り魔こと、百式司令部偵察機V型甲) 製作/2001.3.10 PM 09:05
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