「声が聞こえる」
Λ(ラムダ)サーバ 名もなき 希求者の 風野
このフィールドに3人のプレイヤーがやってきた。
かの幸運な冒険者、レナ、シューゴとレアハンターミレイユだった。
「ミレイユ、今日は最後の最後まで手助けしないでね。そろそろ私たちもレベルを上げないと...」
「うん。わかったよ。絶対にヘルプって(手助けして)シーフ(経験値泥棒)したりはしないから。
凰花も後から追ってくるって言ってるし。」
シューゴも大分会話には入り込めるようになったが、レナ、シューゴとも経験値が非常に少ない。
RPGをやったことのある人ならよくわかるだろうが、これは攻略において致命的である。
そのため、経験値をためるために二人はフィールドに出てきたのだった。
「ここならそれほど強いモンスターは出てこないはずだからね。思う存分戦ってみればいいと思うよ。」
「わかった。俺達も最後の最後まで粘るからな!」
最初、しばらくは順調そのもの。ばっさばっさと切り倒し、経験値稼ぎは順調なように見えた。
しかし、それに気をよくして前へ前へとずんずん進んで行ったのがまずかった。
後ろには経験豊富なミレイユがついている。何かあってもまずめったに心配はない、と。
「お兄ちゃん、敵だわ。」
「わかった。じゃあさっきと同じよ...何だ?!」
出現したのはファランクス。シューゴ、レナの二人には少々厳しい相手が出現した。
ミレイユは最後の最後まで手を出さない。本人達の要望がない限りは防御に徹する。
シューゴとレナが攻撃体勢を構えた。先制攻撃をかける。しかし、その攻撃は対したダメージを与える事なく
空を切った。お返しとばかりに手痛いしっぺ返しの攻撃が来る。
今までの敵とは比べ物にならないダメージ。HPがかなり減ってしまう。
数刻の後。レナ、シューゴともかなりぎりぎりのステータスになってしまっている。
しかし、二人ともここまで来ると己のプライドが許さないのか、ミレイユの名前を発することもない。
肩で息をして、それでも立ち向かおうとする。
このままじゃやばい。そんな思いがシューゴの頭を駆け巡る。
to be or not.〜行くべきか行かざるべきか。それが問題だ。
そう考えている間にもますます事態は悪化している。
ええい。行け!
シューゴが決断した。 右腕を高々と上に掲げる。
データドレイン。シューゴの持つ最も強力にして最もリスクの高い業。
目の前にいる敵そのものを変化させてしまう恐ろしく強力な業であるが
その分失敗したときの反動たるや凄惨な物がある。
自分はおろかパーティ全員をバッドステータスに落とし入れてしまう。
まさしく今回は.....典型的な後者だった。
データドレイン失敗。自分達のステータス表示がみるみるうちにひどくなっていく。
シューゴ--麻痺
レナ--毒
ミレイユ--魔法封じ
「ミレイユ!これって...」
シューゴが恐る恐る尋ねる。
「....最悪。...何も出来ないよ。...」
皆ろくに動くことが出来ない。ただでさえ悪かった状況だ。次に攻撃を食らえば一発でやられるだろう。
...3人とも。...
そう。3人ともやられるところだった。が、
すんでのところで 天からの助け...もといルートタウンからの助けが来た。凰花だ。
さすがに自分の目を疑うような早さで敵を切り倒していく。
あっという間にファランクスは倒されてしまった。
ぎりぎりのステータスを凰花が端から治していく。魔法を封じられたミレイユに頼ることはできない。
ひとしきり、アイテムを使って回復を待つ。
「追い付いてみればこの有様だ。まったく、どうなるかと思ったよ。」
凰花がぼやく。
「お兄ちゃんが先走る前にミレイユを呼べばよかったのよ!」
突然、各々のFMDに怒鳴り声が響く。
「そんな事を言うんだったら自分が呼べばよかったんじゃないか!」
負けじとシューゴも言い返す。
凰花とミレイユにはFMDを通じて聞こえる声と、音声入力システムが必死に翻訳している文字が見えるだけ。
「それに絶対にミレイユを呼ばないって決めてただろう。」
「それに絶対にミレイユを呼ばないって決めてただろう。」
その時、同じ文章がシューゴ、レナの両方から聞こえてきた。それもかなりの音量で。
テキストデータもシューゴとレナの両方が表示されているから間違いではない。
どうやらお互いのマイクにお互いの音声が入ってしまっているようで、
レナの台詞がシューゴの声で出たり
逆にシューゴの台詞がレナの声で出たり。
「なによ、だからってその呪いの腕輪を使うことないでしょう。少なくとも使う前に一言言ってよね。」
「なによ、だからってその呪いの腕輪を使うことないでしょう。少なくとも使う前に一言言ってよね。」
口調から察するにこれは玲奈の言葉だろう。
画面表示はただ立っているだけだが言葉から伝わってくる熱気はすさまじいものだった。
「あの状況で『使ってもいいか?』なんて聞いてたらやられてただろうが。」
「あの状況で『使ってもいいか?』なんて聞いてたらやられてただろうが。」
「それはお兄ちゃんが意地張っただけでしょう。ミレイユに手伝ってもらったってよかったでしょう?」
「それはお兄ちゃんが意地張っただけでしょう。ミレイユに手伝ってもらったってよかったでしょう?」
凰花もミレイユも止めるに止められないまま、声は続く。
「誰もそんな事は..イテっ!!」
シューゴの台詞が途中で切れた。
凰花にも、ミレイユにも状況が容易に想像できた。
誰が考えても、レナがシューゴの頭を叩いたと思うだろう。事実、その通りだった。
「おまえ、何も叩かなくったって...」
ゴンッ!と鈍い音がFMDを通してまた伝わる。
「痛いっ!お兄ちゃんが私を叩くなんて...もう!どうしてそんなに自分勝手なのよ!」
「自分勝手なのはどっちだよ!もう本当に何かあるとすぐひがむわ、嫌味を言うわ...」
「そうしなきゃならないような事をお兄ちゃんがするからでしょう!」
凰花がミレイユにだけ伝わるように文字を送ってきた。
『この戦いだけはさすがの私でも止められそうにないな。』
すかさずミレイユが返信する。
『これが本当の “犬も食わない兄弟喧嘩” だね。』
.........おそまつ。.........
声が聞こえる Fin.
〜後書き〜
お馬鹿小説....Project .hackファン(特に腕伝ファン)の皆様、重ね重ね、申し訳ない。
小説そのものは随分前に書き上がっていましたが...公開が遅れてしまいました...。
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