星かげさやかに(Harrys Opinion)

「オリオン座は冬の代表的な星座で、有名な四角形の形はベテルギウス(0.5等級)
 リゲル(0.16等級)、セイフ(2.6等級)、ベラトリクス(1.64等級)の四つで出来ている。
 さらに中心には3つ斜めに星が並んで.....」

洋皮紙の上を羽ペンが軽やかに滑っていく。

「今日の授業はここまで。」

ペンのインクがなくなって紙の上を空滑りした時、先生の一言が授業が終わりを告げた。

暖かい暖炉の温もりの中で思い思いにくつろいでいる談話室を僕はハーマイオニーに向かって進んでいった。

「ハーマイオニー!」

「なに?ハリー?」

あ、本を読んでたみたい。まずかったかな?

「オリオン座にある星雲の名前ってなんだったっけ?」

「『オリオン座大星雲』よ。等級5.67。」

「...5.67っと。ありがとう。そういえばさぁ...」

いつも通りのそんな他愛ない会話だけど、今晩はちょっとだけ特別な日になりそうな気がする。
おっと。ハーマイオニーには内緒だっけ。顔に出さないようにしないと。

そんな事を考えながら僕はなんとか無事に部屋に戻れた。

窓の外を見ると冬特有の冷たく澄んだ空気が星をきれいに見せていた。
僕は星座表を手にとって、オリオン座が今日どこの方角に見えるかどうかを確かめた。
まさかそうそう上手くはいかないと思うけど、この際寝顔を見られるだけでも幸せかもしれない。

みんな寝静まって静かな闇の音だけが聞こえたころ、もういいかと僕は透明マントを片手に
女子寮に向かって歩き出した。

静かに、静かに、とにかく気配を殺してハーマイオニーの部屋に入った。
丁度ハーマイオニーはぱたんと大きな魔法史の教科書を閉じたところで、
ランプを消し、ベッドに横になろうとしていた所だった。
声をかけようか、どうしようか迷っているうちに、僕はうっかり透明マントのはしを
ほんの一瞬だけめくってしまったんだ。

ハーマイオニーは気付いたみたいだった。不意に顔を上げると突然手をこちらに延ばしてきた。
もちろん僕はよけたけれども一瞬だけ僕のほうが遅かったみたい。気付かれた。

「...ハリー?...」

(計画実行だな。)
これは怪我の功名というのか、なんというのか、僕は手招きしてハーマイオニーを廊下に誘導した。

廊下には...だれもいない。さすがにこの時間には皆寝ているらしい。

「ハリー、あなたはここに来てはいけないはずよ。」

「...ごめん。...」

「で、何の用?まさか私の寝顔を見に来たなんて訳じゃないわよね。」

ぎくっ!するどいっ! 平穏な顔を作った...つもりなんだけどな。一瞬でも顔に出たかもしれない。

「展望塔へ行こう」

僕はこわごわ、小声でささやいた。

さて。僕とハーマイオニーは外に出たけれど、いくら透明マントがあるとはいえ、
ここから展望塔へ登るのは至難の業だな..。

勿論、僕がその事を考えていないはずがない。箒をしっかり用意しておいた。

冷たく冷えた夜の空気に思わず身を縮めているハーマイオニーに僕は手招きして
箒に乗せた。同じく箒に乗っている僕の後ろに。

「二人乗りするつもり?」

「大丈夫。僕は100年に1度のシーカーだもの。落としゃしないさ。」

んー、別に間違った事は言っていないはずなんだけれどどうも歯が浮くなぁ。
自分で自分を誉めているからかな?
くすくすと小さく笑ったハーマイオニーはひらりと箒に乗ってきた。

「しっかり掴まってね。」

僕は両肩に感じた重みを確認した後、地面を蹴った。

背中に体を預けてくるハーマイオニーの温かみを感じつつ、僕は余計な振動を起こさぬよう、
注意しながら飛んでいった。
ともすればハーマイオニーの鼓動まで聞こえてきそうなんだけど、
ということは僕の鼓動もハーマイオニーに聞こえるかもしれないということ。
緊張しているのがばれやしないかとはらはらするとますます鼓動が速くなる。
妙な悪循環だな。と思わず心のなかで苦笑した。自分でやり始めた事なのに。

無事に塔の上に着地すると、僕は一際目立つ大きな星座、オリオン座の方角に向いた。

「願い星ってハーマイオニー、知ってる?」

ハーマイオニーは首を振った。

「オリオンの三つ星の中の一つ、ベータ星の事を昔から願い星って呼んでるんだ。
 なんでも願いをかなえる星ってね。」

そういうと僕は静かにオリオン座に向かって手を組んで、かねてから願っていた事をお願いした。
(どうか、もっとハーマイオニーと仲良くなれますように)
ハーマイオニーも横で手を組んでた。あ、たぶん僕に何をお願いしたか聞いてくるなぁ。

「何をお願いしたの?」

やっぱり。ちょっと洒落てみようか。

「『君と同じ事をお願いします』ってね。」

そう言って笑って見せると、ハーマイオニーも横で笑った。

今度は僕が何も言わなくてもハーマイオニーは自分から箒に乗ってきた。
満更でもなさそうな顔だし、よかったよかった。

「で、本当にここに呼ぶことが理由だったの?」

あっ!一番痛い質問をされてしまった!
でも僕は先ほどのように顔には出さず、極力すまして答えた。

「120%の大成功ってとこかな。」

あ、納得してくれたみたい。ありがたいけど...本当に痛い質問をしてくるなぁ..。

僕はハーマイオニーと共に各々の部屋に帰ると、ほくほくとうれしい気持ちでベッドに入ることができた。
もっとも、それから数日の間、他人に悟られないように注意する必要があったけれども。
(だって思い出しただけで嬉しくなるんだもの!!)

後書き
ハリーポッターの視点から書きました。
ぜひハーマイオニー版と、同時に読む事をおすすめします。
二人の心情が、よ〜くわかります。
あ、べた甘が苦手な人は注意してください!(笑)

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