古びた扉を押し開けると冷たい空気がハリーたちを包み込んだ。
しくしくと泣き続けるマートルの声が響くトイレに3人が足を踏み入れると、その音に気付いたマートルが
驚いたように顔を上げた。

「また...来てくれたのね。」

「何を言ってるのよ、友達じゃない。友達が遊びにこないなんて事がある?」

「そう。そうよね。幽霊になって始めての人間の友達だわ。3人共ね。」

マートルはそう言って少しばかり微笑むと横を向いて涙を拭きとった。

ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人がマートルと出会ってから、ちょくちょく遊びに来ようと
言った者はいなかった。それは行きたくないからではなく、3人とも暗黙の了解で、
マートルに会いに行くことをわかっていたからである。
事実、マートルに会って話をするようになってから彼女が癇癪(かんしゃく)を起こすことも少なくなったし、
なにより時たまではあるが笑うようになった。
単なる世間話で人一人、いや幽霊一人救えるならと、暇があれば3人で行くようにしていた。
話す内容は学校の話だったり先生の話だったりといろいろだが、お互いに楽しく話をする事が出来ていた。

その日は珍しくマートルの方から話を切り出して来た。
「今日はね、特別な日なのよ。」

「特別?...祝日じゃないから誕生日か、それとも....」

「誕生日の逆よ。逆。」

「あ!絶命日!!」

「そう。なんか...。昔を思いだしちゃったのよ...。」

いつになったら出尽くすのであろう涙をまた一つ落として、マートルは過去を話し始めた。

マートルが嘆いた日 

〜A day when Myrtle Moand 〜

私がホグワーツに入った時は楽しかったわ..。今でこそこんな性格でも
あの時は元気だったのよ...。
入ってすぐに親友も出来た。今ごろどうしてるのかしら。
アスティよ。アスティ・ノートン。よく教えてもらったわね...。
私もがんばって授業についていったわ。
あなたたちと一緒よ。何もかもが楽しい授業でね、魔法薬学、魔法史、闇の魔術の防衛術...
授業だけじゃないわ。友達と騒ぐのも楽しいしね。
好きな人もいた。 たしか...監督生第1候補って言われてたわ。
うん、ケビンよ、ケビン・サンダース!クィディッチもうまかったわ...。
シーカーをやってた。素早い動きで、ファンがいっぱいいたの。私もそれに漏れずファンだった訳。

でも..だめね、私って。とんでもない失敗をやらかしたのよ。
あれはね。膨れ薬をつくる魔法薬学の実習の時。
私、その子と同じ班になってものすごく浮き足立ってた。
あんまりドキドキするんで、手も震えてた。でね、とうとう、薬を火にかけている途中で
まちがえて鍋をひっくり返しちゃたの。熱い薬が彼の腕にかかって..。
ものすごい勢いで膨らみだしたわ。 すぐに先生が飛んできて中和剤をかけたけど効かなかった。
明らかにおかしい勢いで膨らんでいくの。
私、何が何だかわからなくておろおろしてたわ。その時、アスティが叫んだのよ。
『マートル!量を間違ってるわ!!』って。
先生が黒板に書いてた組成を写すときに
0を1つ多く書いたのに気がついていなかったのよ。
10倍の濃度の薬を、それも熱い状態で大量にかけられた彼は大変だったわ。

結局、彼は3ヵ月保健室に入院したの。膨れ薬のほうは根気よく中和剤をかけてなんとか収まったけど、
腕のひどい火傷はそう簡単には直らなかった。

それから寮の皆に苛められて、もちろん彼にも会わせる顔がなくて。
3階の女子トイレは私が泣くのに丁度いい場所だった。

もうどうしようもなくてこらえ切れなくて、そこで1晩中泣いていた時よ。
話したわよね。個室の外に出たとき何かにみつめられて..そして...死んだの。

「はぁ。ごめんね。ぺらぺらと。」

「ううん。とんでもない。また少しでも笑えるでしょう?」

「そう。そのために来てるんだもの。ね?ハリー」

「そうそう。その通り。」
そういうと4人はしずかに笑って各々の居場所に向かった。

マートルが元どおり、元気な姿でホグワーツ中を飛び回るのは時間の問題....なのか?

Fin.

後書き
なんだかマートルが一人で語るような作品になってしまいました。
え..今までの私の作品のなかではじめてオリキャラ(オリジナルキャラクター)登場です。
...といってもほぼ名前だけですが。 じつはこの小説、隠れたメッセージがありまして。
この2人のキャラクターのイニシャルは僕の友達のイニシャルにしております。
名前を決めるときの取っ掛かりが欲しかったんですね。
でも逆にイニシャルに縛られて大変だったかも..。

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