「Interpreter of beating heart.」



談話室の隅っこに、栗色の髪を持つ少女が一人。
対岸の隅っこに、赤色の髪を持つ少年が一人。
.....ちなみに、栗色の髪を持つ少年は、クィディッチの練習で、外出中。

壁に向かって、何かをひたすら紙の上に書き付ける少女の姿を見つけ、
赤毛の少年...ロンが苦笑いしながら、声をかける。
「周りがどれほど楽しげに談笑していようと、君には関係ないみたいだね。」
「あら、そんな事ないわ。 楽しいもの。」
ささっと、目立たないようにではあるが、ハーマイオニーは手元の紙を
まとめて、人の目に触れにくいようにする。 レポート用の羊皮紙じゃなく、
ちょっと飾り枠のついた、便箋だった。
「手紙?」
「えぇ、久しぶりに友達から手紙が届いたの。 そのお返事を。」
「...男かい?   ...あ、いや。へんな意味でなくて。」
うっかり口走ってから、ロンはハーマイオニーの表情に一筋の黒い影が
走るのを感じ取り、つついてはいけない薮をつついた事に気づいた。
「...クラムじゃないわよ、お生憎様。」
途端、ハーマイオニーの声色の温度が下がり始める。
普段なら、この段階で...いや、そもそも手紙の話に移る前に...ハリーが
話題を振り替えるところだが、今日はその場に名裁判長は居合わせていない。
聞くともなしに聞いていた周囲に、冷や汗が走る。
抑止力となるべきハリーがいない今、この状況ではそのまま一挙に冷戦状態へ突入しかねない。
「いや...やめよう。ごめん。この手の話で何度喧嘩したか。いい加減学習しなきゃ、僕も。」
もはや自分たちで同行しようとは露とも思わない外野陣は、
珍しく、大人な対応をしたロンに安心し、安堵のため息を漏らした。
とはいえ、もうすでに二人の世界にどっぷり漬かろうとしている二人の耳には、届かない。
「そうね、無駄な喧嘩はしたくないもの。 見られて困る手紙でもないし。」
ハーマイオニーはそう言って、手元に数枚重なっていた便箋のうち一枚を、ぽん、とロンに手渡した。



London den 8 Juni 2005
Liebe Anna,

Vielen Dank fuer deine Mail. Wie geht es Ihnen?
Wie ist das Wetter in Berlin? ....



「...えと、何? これ。」
ロンは便箋を一瞥するなり、情けない声でハーマイオニーに問いかけた。
すでに手紙の続きを書き始めているハーマイオニーは、机に向かったまま、簡潔に答えを返す。
「Deutsch.」
「ドイチュ...?」
「...German.」
「あぁ、ドイツ語かぁ。」
自分の力では読めないと理解したロンは、そっとハーマイオニーの隣に座って、ハーマイオニーが
すらすらと便箋に何かを書きつけていくのを眺めていた。
「本当、よく知ってるよね。 英語はもとより、フランス語やら、ドイツ語やら。」
「あら、ほんのいくつか約束を覚えれば、大して難しい文法じゃないのよ?」
「文法はわかっても、単語を覚えないと意味ないじゃないか...」
「それはもちろんそうだけど。」
インクが減ってきたのか、徐々に線が細くなっていく。 ハーマイオニーは紙の上から羽ペンをはずし、
インク瓶にその先をぽちゃんと浸けた。
「そうだな...僕が君に言えるドイツ語となると、"Ich liebe dich"...しかないかな。」
その言葉がハーマイオニーの耳元に届いた瞬間。
ハーマイオニーの頬は一挙に赤く染まり。
固まった手は、インク瓶から取り出したばかりの羽ペンを取りこぼして、便箋に大きな染みを広げた。
「あれ、ハーマイオニー? おーい。」
すっかり、熱暴走状態になってしまったハーマイオニーの顔を覗き込みながら、
ロンがしてやったり、と顔を緩ませる。
「仮にも、あのパーフェクト・パーシーの弟だよ? 意味くらい知ってるさ。」
見くびらないでね? と続けて、ついでにフリーズ状態なのをいいことに、きゅうとハーマイオニーを
腕に抱えると、ハーマイオニーはその胸をこつんと小突いて、ささやかな抵抗を試みるも。


それでもやっぱり、まだ呆然として声も出せないハーマイオニーが、再起動を完了するのは。


もう少し、後の話。





後書き

2005/6/8[ロンハーの日]お祝い小説。
相変わらず、ゆったり小説書いてる暇がないので、短いです。
おまけに、長らく書いていなかったせいで、下手になってます...(泣)
うあぁん。

なにはともあれ、なんだかんだで仲むつまじい二人に乾杯。


.....自分で書いててなんですが、どんな後書きやねん(苦笑
.....夜中に作業してるので、眠いんだな...きっと(現在2005/06/08 02:12 AM)


ギャラリーに戻る
Topに戻る