「言葉の裏表」
-Amorous are continue.everytime,everywhare.-
「あなたなんか、嫌いよ!」
「何を、こっちこそ願い下げだね。 今後一生、僕のそばに近寄らないでくれるかな?」
「言ったわね...私だって、あなたの近くになんか行きたくないわよ!」
ここはグリフィンドールの談話室。
耳を覆いたくなるような大声で先ほどから続く舌戦は、当然ながらいつもの二人。
すなわち、ウィーズリー家の六男坊に、マグル出身の学年主席。
もうすっかり慣れっことなっているグリフィンドール生には、もはやこんな声など
気にもとめず、めいめいの作業を続けるだけの余裕が出来ているのだが、
今回ばかりは勝手が違った。
事の始まりは1時間半ほど前に遡る。
折しもその時は魔法薬学の授業がまさに始まろうとしている頃。
暗く、じめっとしたいつもの教室をスネイプが神経質な足音を立てて歩き回っていた。
「今日作るのは、我輩が処方した薬だ...マルフォイ、真実薬の効果はわかるな?」
「はい、真実薬を飲まされたものは嘘をつけなくなり、真実のみを語るようになります。」
「よろしい。真実薬は非常に繊細かつ取り扱いに注意を要する...とても
生徒に扱わせるには無理のある薬だ...。しかし、これから作る魔法薬は扱いが簡単でありながら
真実薬とほぼ同等の働きを持つ。 ペンを取れ...間違わずに書き写せ。 処方は
前の黒板に書く。」
スネイプが杖を一降りすると、黒板にはびっしりと細かい文字が埋められた。
羽ペンの先が羊皮紙を引っ掻く音が一斉に響き、生徒が必死にノートをとる。
薬品名は、「反・真実薬」だった。
「今日の実験はここまでだ。 この薬の詳しい薬効、およびその効果の現れる仕組みについて
羊皮紙に2m以上のレポートを来週までに仕上げてくること。」
実験終了を告げる声と共に、生徒から安堵のため息が漏れる。 確かに真実薬よりは
扱いは簡単なのかもしれないが、原料は10種類以上、加熱の時間から材料投入のタイミング
まで、すべて秒単位で指定されているような、恐ろしく手間のかかる薬だったからだ。
寮へと帰る道すがら、凝り固まった肩をほぐしながらロンがつぶやいた。
「まったく...あれで"扱いが簡単"なんてよく言えたもんだよな...。」
「ネビルだけじゃなくて、ロンまで泣きそうな顔して作ってたもんね。」
「確かに、面倒ではあったわね...」
「あれほど悠々と完成させてよく言うよ!」
いつもながらハーマイオニーは、クラスで1番に薬を完成させた。
グリフィンドールはおろか、スリザリンの誰よりも早かったので、あまりいい顔はされなかったが。
「でもさ、反・真実薬ってどんな効果があるんだろう?」
とっととレポートにとりかからないと、とハリーが言う。
「"Anti-Veritaserum"って事は、真実薬の効果を打ち消すような働きをするのよね。」
「あー、要するに。 真実を言わせないようにする薬なのか。」
「いえ、ちょっとその言い方は正しくないわ、ロン。 先生は真実薬とほぼ同等の働きを
持つ薬だっておっしゃってたわ。 つまり...」
ハーマイオニーはここで一拍の間を置いた。
「嘘のみを語るようになるのよ。」
ハリーとロンは、しばらくきょとんとした顔をした後、だいぶ遅れて意味を理解したようだった。。
「えー! それって真実薬と結局同じ事じゃないか。」
「ちょっと待って。逆の真実を言うからといって、真実がわかるとは限らないのよ?」
ハーマイオニーは瞳をくるりと一回転させてから、要するにね、と前置きして言った。
「例えば...ロン、あなたが真実薬を飲んだとして、私はあなたにこう聞くの。『あなたの年齢は?』」
「真実薬だから、『私は17才です。』って答えるね。」
「じゃあ、ハリー、あなたが反真実薬を飲んだとして、同じく聞くわ。『あなたの年齢は?』」
「嘘をつくんだろ、だから例えば...『私は83歳です。』とか。」
「ほら、ロン。 ハリーの今の答えからハリーの年齢を特定するのは不可能でしょ?
ハリーの年を特定したければ、もっと細かくて面倒な質問を延々繰り返す必要があるわ。」
「そうか、嘘だとわかっている発言が、必ずしも真実を示すとは限らないんだ..。」
「そういうこと。 反真実薬を真実薬の代わりにするには、使う方も論理的な質問を使わないと。」
ハーマイオニーは 満足そうにほほえんだ。
その日の談話室。
すでに季節は冬、あかあかと暖炉の燃えるあたたかな談話室ではいつものようにグリフィンドール生が
集い、ある者はおしゃべりに興じ、ある者は趣味に興じ、ある者は安息を求め、
またある者はひたすら課題をこなしていた。 ハーマイオニーを筆頭に、ロンとハリーの計3名は
ハーマイオニーに半ば強制的に引きずり出され、今日出た課題のレポート作成に追われていた。
「まったく....作る手順をまとめるだけでも一苦労だ。」
「文句言う暇があったら、書いた方がいいんじゃない?ロン。」
ペン先から目線をそらさず、つまり顔も向けずにハーマイオニーは言った。
「ちぇ。 わかってますよ。面倒を作りたくなければ、とっとと書き上げればいいんですから。」
「わかっていただけてうれしいわ。 ...あらやだ、資料を一冊、部屋に忘れてきたみたい。」
5冊も6冊も傍らに分厚い本を積んでおいてなお足りないのかという指摘はともかくとして、
ハーマイオニーは、ちょっと取ってくるわ、と言い残して席を立った。
「あ、おーい!ハリーにロン!」
ハーマイオニーが席を立ったのを見計らったかのように、フレッドが後ろから声をかける。
「1分でいいから来てくれないか? 練習の予定を聞きたいんだ。」
ハリーとロンは、羽ペンを置き、手元に置いてあった紅茶を一口飲んで席を立った。
二人は気づかなかった。声をかけた時、フレッドの目が怪しげに光ったこと。
そして、暖炉の陰からジョージがその様子をうかがっていたこと。
そして、席を立った拍子にハーマイオニーのポケットから小さな瓶がこぼれ落ち、
椅子の上に転がっていたことに気づかなかったこと。
2分と立たないうちに、3人はまた元の机に戻った。
ハーマイオニーは腕に抱えた本をドン、と机に置いてすぐ、机にあるカップに手をつけた。
ロンも同じく、席に着くなりカップに手を伸ばし、中身を一息に飲み干した。
「やー、二人揃って同じ行動するなんて、いいよねぇ...さすがおしどり夫婦。」
揶揄全開のハリーの発言に、二人は揃って顔を赤くして、言った。
「もっと言って!!」
「.....はぁ??」
予想外の返答に、ハリーはおろか周囲にいたギャラリーその他まで、奇怪な声をあげた。
ただ二人、笑い転げるフレッドとジョージを除いては。
「フレッド、ジョージ! 何をしたのさ!」
あまりにも気味の悪い状態に、たまらずハリーが聞いた。
「いや、なに。」
「ハーマイオニー女史の作ったとおぼしき反真実薬を見つけたからね。」
「試しにちょっと、二人のカップに入れてみただけ。」
「大丈夫、効果は30分も保たないから。」
「今ならどんな質問にも答えるぜ?」
あっけらかんと言い放つお茶目な双子に、ハリーは頭を抱え込んだ。
「な、ジョージ。 もう少し煽ってみる?」
「だな。」
こそこそと、手短に打ち合わせた二人は人混みを押しのけて前に出る。
「なぁ、ハーマイオニー。」
「うちの六男坊のこと、どう思ってる?」
「本人に言ってごらんよ。」
ぴくり、とロンの頬が引きつった。
そして話は最初に戻る。
「あなたなんか、嫌いよ!」
「何を、こっちこそ願い下げだね。 今後一生、僕のそばに近寄らないでくれるかな?」
「言ったわね...私だって、あなたの近くになんか行きたくないわよ!」
やや遅れて、周囲のギャラリーがどよめいた。
高尚な論理学について説いてくれたハーマイオニーには申し訳ないが、
この場合、今まさに二人の口から飛び出した発言の趣旨を逆転させれば、本心は容易に理解できる。
談話室がしばらく騒然となったのは、当然のこと。
20分くらい経った頃、"その時"は突然訪れた。
「君なんて...」「あなたなんて...」
二人は同時に大きく息を吸い込んで、二の句を継ごうとした。
その瞬間、パチン!といった鋭い衝撃が周囲の空気に伝わり、魔法薬の効果が切れたことを知らせた。
しかしながら、一度大声を出そうとして構えた体を突然止めることは難しく、
二人はそのまま勢いに乗って、"本心を"語ってしまった。
「「大好きなんだから!!!」」
数秒後。 展開の早さについて行けなかったギャラリーが、ぴたりとそのどよめきを止めた。
遅れて自分の発言の意味を悟ったハーマイオニーも、ロンも、顔を真っ赤に染め上げている。
落ち着きかけていた談話室に、再び混乱が訪れた。
「大体、なんでハーマイオニーが反真実薬持ってるんだよ...」
いくら自分で作ったとはいえ、見つかったら減点ものだぜ? と、なんだかいつもと立場が逆転
しているような説教をロンがこぼす。
「あら、だってレポートに詳しい薬効を書け、って言われたんですもの。」
ハーマイオニーは、とびっきりの笑顔をロンに向けて、あっさり言い放った。
「あなたで、試してみようと思って。」
文句を言いたいけれど、滅多に見ないハーマイオニーの表情にたじたじのロンと、
そんな事はとうに計算づくなハーマイオニー。
獅子寮の英雄が、やってられない、とため息をついた。
Fin.
後書き
なんか、本格的に書くの、久しぶりですねー。
ふと、思いついたネタが消えないうちに、想像を膨らませて記憶にとどめておいて、
構成を練り直して書き上げました。
天邪鬼か、あんたら! と突っ込みたくなるくらいへたれなロンと、
意地っ張りのハーマイオニーに、本心を言わせたかったんです(笑
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